佐藤康光会長の就任会見

 (2017年2月6日17:00から 将棋会館)

佐藤康光会長の冒頭あいさつ

 みなさま本日はご多忙の中、このようにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、臨時総会と理事会が開催され、会長に選任されました佐藤康光です。理事自体も初めての経験となります。甚だ未熟ではございますが、どうぞよろしくお願い致します。
(以下読み上げ)
 昨年秋からの一連の問題では、将棋ファンのみなさま、主催者、及び関係各位、そして何より三浦弘行九段とご家族の皆様に大変ご迷惑、ご心配をおかけしました。私は当時、棋士会の会長を務めていましたが、何一つお役に立てなかったことをおわびいたします。申し訳ありませんでした。
 昨年末の第三者調査委員会からの報告で三浦九段の疑惑が晴れ、2月13日が三浦九段の復帰戦となります。これからも素晴らしい将棋、活躍を見せて頂けるものと思っています。今後、三浦九段の名誉回復、ならびに将棋界の信頼回復に全力で取り組んでまいりたいと思っております。今回を機に組織、対局規定など日本将棋連盟自体を改めて見つめ直し、時代に即して変えるべき所は変え、残すべきところは残す。時間のかかることもあるかと思います。ただ、数百年の長い歴史・伝統があり、世界でも有数の知能ゲームと思っている将棋の良さは不変です。一人でも多くのみなさまに将棋を親しんで頂けますよう、邁進していきたいと思っております。
 今月1日にインターネットテレビ局AbemaTVの将棋チャンネルが開局し、当日に行われましたA級順位戦の8回戦一斉対局のライブ中継は非常に大きな反響がありました。また3月には大人気将棋アニメ「3月のライオン」の映画が全国ロードショーされます。将棋を知らないファン層へのアピールにもつながるかと思っており、非常にありがたいことだと思っております。また昨年、史上最年少で棋士となりました藤井総太四段の対局も今後注目されるところかと思っております。タイトル戦をはじめとする公式戦・女流棋戦、コンピューターとの対決、将棋コンテンツの充実、普及イベント等、ファンとみなさまとの交流など、より新しいアイデアを盛り込みながら棋士・女流棋士一同で全力で戦い、臨んでいきたいと思っております。これからも将棋界に変わらぬご声援をよろしくお願い致します。

青野専務理事の説明(臨時総会の議題・内容について)

 まずは専務理事としまして、このような形でみなさまにご迷惑をかけた、ファンの方々にも、報道陣の方々にも連絡が遅くなったり、ファンの方々、そして棋士、何よりも三浦九段に心痛を与え、棋士の生命を半分奪うような危機になりましたことを深くおわびしたいと思います。
 本日の総会の進行をざっと説明させていただきます。谷川会長がご承知のとおり心身の疲労による体調不良で欠席となり、専務理事の私が会長代行としてその理由を説明しました。そして本日の総会成立の確認と、さきほどのおわびと、みなさまがたに今後は将棋連盟が一丸となって信頼回復、そして今現在、将棋界は非常に広範な話題を提供しておりますので、今後とも将棋界の良い面だけを前面に押し出して将棋の普及に努めたい旨のごあいさつをさせていただきました。
 議長指名ということで議長に脇八段、副議長に森下九段を指名し、みなさまにご了承いただきました。
 議題は、第1号議案として理事選任、佐藤康光さん、第2号議案として井上慶太さんの承認をいただきました。この2つは拍手で決まりましたので、だいたい10分程度で終わりました。
 この後、やはり三浦九段出場停止処分に関しまして棋士からかなりの数の質問、厳しい指摘をいただきました。質疑応答に応じました。その中で、きょう実は総会の始まる前に、棋士28名の署名による臨時総会開催の請求というものをいただきましたので、28名というのは臨時総会を請求できる人数になりますので、これをどうするかということで、総会の後の理事会で討議をしました。
 申し訳ありません、ちょっと手順が前後になりましたけれども、理事会におきましては、佐藤会長の選任、井上常務理事の承認ということで決まった後に、この臨時総会開催の請求についてどうするかを検討し、それについては片上常務のほうから詳しくお話させていただきます。

片上常務理事の説明(理事解任を議案とする臨時総会の開催について)

 みなさまこんにちは。総務担当理事を務めております常務理事の片上と申します。改めまして私からも常務理事の1人として、このように将棋ファンを大変お騒がせしておりますことを一言おわびを申し上げます。
 総務担当として実務的なことのご説明をいたします。将棋連盟の定款第14条2項で10分の1以上の議決権を有する正会員は臨時総会の開催を請求できるという項目があり、それに基づいて総会開催の請求がございました。第1号議案、青野照市専務理事の理事解任、以下、私まで5号まで議案が並んでいる、きのうまでの専務理事・常務理事に関する解任の要求であります。本日、理事会を開きまして、この署名を受けまして、2月27日月曜日13時より臨時総会を改めて開催することを決定いたしました。東西の将棋会館で、理事解任を議題とする臨時総会の開催を致します。

質疑応答

(質問者は所属のみ掲載し、氏名は伏せています)

 Q(東京将棋記者会幹事社・日本経済新聞・A) 最初に佐藤新会長に。非常に難しい状況だと思うが、この状況の中で理事選立候補、まあ会長立候補だと思うが、それに至った心境、お気持ちは。
 佐藤会長 1月に入ってから指し初め式で谷川会長にお会いし、その後またお話しする機会がありましたが、非常にやはり心身ともに限界を超えていらっしゃると言いますか、谷川先生はすごい辛抱強い我慢強い先生だと思っておりますので、もう本当に心身ともに限界を超えてらっしゃるんだなということを感じました。それが1つ。それからいろいろお話ししているうちに、自分が立候補する意思を固めたということです。

 Q(東京将棋記者会幹事社・日本経済新聞・A) もう1点、三浦九段の名誉回復、あるいは将棋界の信頼回復というお話があったが、もう少し具体的に。
 佐藤会長 名誉回復ということに関しては、三浦九段は昨年末の第三者調査委員会の報告で潔白が証明されたということで、将棋連盟としても、今後の対局、特にやはり心配なこと、1つ大事なことは対局の環境を万全に整えるということだと思います。三浦さん自身も4カ月間以上対局から遠ざかっているということもありますし、その間に将棋連盟の対局規定も12月14日に変わりまして、食事の時間が短くなったり、外出禁止になったり、電子機器の取り扱いもロッカーに預けるように変わりました。そういうことも三浦さんご自身に説明して、今こういうふうになっているとお伝えして、より彼が対局に集中できる環境を作っていくことが1つ大事で、やはりいい将棋を指していただくことが1つ大事なことだと思っております。
 今回の信頼回復という点におきましては、谷川先生もおっしゃっていたと思いますが、ずっと変わらずにやってきた部分で、対局規定に関してもずっと変えていなかったところに落とし穴があったと思っているので、あいさつでも触れさせていただきましたが、対局規定自体もそうですし、けっこういろいろなご意見ご批判をいただいており、そういう組織的な面についても改めて会員のみなさんと議論して、今の状態でいいのか、改善しなければいけないところは変えなければいけないと思っておりますので、そのあたりも検討しながら、変えていき、ファンのみなさまの信頼を少しずつでも一歩一歩回復していきたいという思いです。

 Q(報知新聞・B) 佐藤新会長は現役棋士としてもまだA級で活躍しているが、そのあたりの今回の決断に至るまでの葛藤は。
 佐藤会長 将棋連盟の歴史として、やはり実績のある方が歴代の会長を務められたことが多かったとは思っております。私自身も正直40代で役員をやるということは、あまり正直、考えていない部分がありました。ただ今回の件もあり、一番はやはり谷川先生、島先生そうだが、非常に献身的にやっていただいたが、結局この問題もなかなか長引いてしまっているということもあり、これはもうその時、自分の気持ちですね。能力という面に関しては自分がどうなのかはやってみないとわからないと思っておりますが、これはやらなければいけないという気持ちになり、それが決断の1つ大きな理由です。
 Q(報知新聞・B) 1月に入ってから谷川先生のご様子もあり決断されたということだが、今回の騒動が起きた時にどこか立候補の思いを抱いて1月に決断に至ったということか。
 佐藤会長 正直そこはまだありませんでした。棋士会の会長という役目もありましたので、そちらに専念しようと思っていたが、やはり谷川先生の体調の面とか、自分の中では大変だなという気持ちもあり、自分の中で決断したということです。

 Q(共同通信・C) 1月になってから谷川会長から「後を頼む」、「君にバトンを渡したい」というようなことは言われたか。
 佐藤会長 お話ししているうちに何かそういうような話になりまして、…うーん(少考)…まあそうですね、そういう部分もありました。

 Q(東洋経済・D) 渡辺竜王について今回の総会では何か処分を下すべきだという意見は出なかったのか。それが1点目で、2点目は谷川前会長の実のお兄さんがそのような署名活動をしているが、そのことについて佐藤会長はどのように考えておられるのか。3点目は、臨時総会をまた開くということだが、その総会を待たずに専務理事や常務理事は辞任しようと考えておられるのではないかと思うが、いかがか。
 青野専務理事 渡辺竜王に関しては今日は全く話は出ませんでした。
 佐藤会長 お兄様が署名活動をして、たしか連盟の会長あてに提出されるというふうにうかがっております。基本的に将棋連盟の方針は今までお話したとおりと思っていますが、一つのご提言としていただくのは大変ありがたいことだと思っております。将棋ファンのさまざまなご意見、世間の方もあると思いますが、いろいろな方のご意見をうかがうということは非常に大切なことだと思っております。
 青野専務理事 3点目、まず私のことですが、谷川会長、島常務と辞めて、私がなぜ残るのかと、そういうことを質問した棋士も当然おります。それが今回、5人の解任のための総会の請求ということになりました。ただ、今回の事件は本当に大きな話ですけれども、将棋連盟はそれだけではありませんし、いま世間に対して素晴らしい話題も提供しておりますし、そして何よりも契約問題、かなり難しい問題があちこちにあります。そういうこともあって、やはり、6月まで任期があるので、その間は現在の業務を続けるのが自分の義務だろうと思っている次第です。ただ、今回もかなり強いことを言う人は年配の人が多いが、若い人の中の票がたくさん辞めろという票が出れば、私自身まったく問題ありませんし、特に若い人たちの意見として辞めた方がいいということであれば、私自身はそのように従いますので、それに対してはその覚悟でおりますので。いずれにしても自分自身はやってくれという票が入れば6月まではがんばるというつもりでおります。

 佐藤会長 すみません、先ほど質問の中で三浦さんの名誉回復についての話があったと思いますが、もう1つ言い忘れたことがありまして、対局に良い環境を作っていくということが1つと、もう1つは、イベント等に多く参加して頂いてファンと交流していただくということも1つ、なるべくたくさん出ていただくということもやっていければと考えております。

 Q(東洋経済・D) 謝罪というのは連盟としてはすでに三浦九段に正式にされているのか。名誉回復の1つだと思うが。
 青野専務理事 いま現在、公式に常務会と三浦九段が会っているということはありません。これから、三浦九段の名誉回復になりますので、その機会はなるべく早く作って、やはり、我々こうやってみなさまにおわびをしておりますけれども、最終的には三浦九段におわびをしないと、この問題は、もちろん終わりではありませんけれども、第一歩が始まらないと思っておりますので、その機会はなるべく早く作るつもりでおります。
 佐藤会長 私自身は三浦さんと今年に入ってから直接お会いして、個人的に、私的になんですけれども、話はして、謝罪ということで、あいさつにも書いたが、棋士会会長として意見を1つにまとめられなかったということで、大変申し訳なかったということで、三浦さんとお会いしました。

 Q(東京新聞・E) 謝罪ということだが、何の点についての謝罪なのか。第三者調査委員会の発表では、処分に関してはやむを得なかったという意見が出たが、佐藤会長は当時の判断はやむを得なかったと思っているのかという点と、もう1点は、謝罪するとすれば何について謝罪をするのかというところをお聞きできれば。
 佐藤会長 私自身も、報道や報告書にもあるとおり10日の会合にも参加しておりましたし、その後、棋士会長として1月末まで務めさせていただきました。でまあ、あの…んー…何と言うんでしょうか、あの…第三者調査委員会の結果とか常務会の今までの対応に関しては、私自身も会員ですから推移を見守っていたというところがあるんですが、ただ、やはり、何と言うんですか、ここまで世間をお騒がせしてしまっているということに対して、やはり将棋連盟としてどこかに問題があったのかもしれないというふうにも考えておりまして、私の場合は特に棋士会長という立場で、棋士のたくさんの意見を早めに集約して常務会にお伝えできればもうちょっと違った形もあったかもしれないという反省があります。

 Q(朝日新聞・F) 佐藤新会長にうかがいたいのは、大変な重責で、かつ谷川前会長が辞任して急に決まるということかと思うが、改めて重い役目を担う心境と決意、あるいは今回の問題に限らずどういう運営をしていきたいかということを改めて。
 佐藤会長 本来でしたら大変な問題ですし、私の能力でそれをうまく収束できるのかということは考えてはおりましたが、自分の場合は引き受ける時はもうそういうことを考えずに、これは本当にやらなければいけないという思いになりまして、というところのほうが圧倒的に強いことです。
 私は棋士会の会長を5年10カ月務めさせていただき、4月からだったが、その3月に東日本大震災が起こり、棋士会の活動の中心がチャリティー活動とか復興応援のイベントの活動をけっこう1年に数回開催することが多くて、そこで感じましたのは、やはり人と人とのつながりと言うんでしょうか、触れあいと言うんでしょうか、将棋を通じてでないとそういうつながりもできなかったですし、非常に将棋ファンの方というものの温かさというか、逆にこちらが励まされると言いますか、特に震災の復興応援ですから、こちらがむしろがんばってくださいと言わなければいけないところを、逆にプロ棋士を応援していただくということもありました。人と人とのつながりというのが非常に大事なんだなあということを感じましたし、将棋にそういう素晴らしい力があるんだということを感じさせていただいた期間でした。
 今回のことに関しましても、ファンとして非常に残念だとか、そういう声も多くうかがっております。ただやはり将棋自体の持つ素晴らしさは変わりませんし、棋士もより身を正して将棋に向き合いまして、素晴らしい対局、またファン一人一人の方と密接に交流していくことによって、元の状態と言いますか、少しずつ信頼を取り戻していきたいというふうに思っております。
 運営のほうに関しましては、私は本当に今回が初めての役員ということで、他の役員にお聞きしたり勉強させていただくことが多いと思いますけれども、将棋の持つエネルギーというものを棋士会の役員をやっている時に感じたので、その力を改めてみなさまにご理解いただけるように頑張っていくという気持ちです。

 Q(ハフィントンポスト・G) 佐藤新会長におうかがいしたいが、従来から、会長職は非常に激務であると言われてきた。谷川前会長もA級から陥落された。研究の時間も非常に少ない。現役の棋士が会長を務めることは非常に難しいのではないかという話もあった。今回の問題を受けて、組織の運営に専任するような、例えば引退した棋士とか、外部から運営を得意とする方を招聘するほうがいいのではないかという声がファンの中やインターネットでかなり出ている。こういった意見についてどうお考えか。
 佐藤会長 現理事会にも外部理事の方はいらっしゃいますので、ただ非常勤という形ではありますが、外部の方がいらっしゃいまして、そういうご意見は常に理事会のほうもうかがいながら話を進めていると思います。ただ、今回の件も受けまして、よりそういう部分を見直すと言うか、どういう形が棋士にとってと言いますか将棋連盟の運営にとってベストなのかということは、すぐに簡単になかなか切り替えられないところがあるんですけれども、会員同士でも議論を煮詰めていない部分だと思いますので、議論を重ねまして、ベストの形があるんであれば、そちらのほうに変えていくということもあると思います。
 現役の棋士が役員を行っている形に現状ですとなっていますが、引退された方にお願いするというのも一つの考え方ではあると思います。でも我々の団体は棋士が理事を選ぶというシステムになっておりますので、そこのところをどうするかということも考えなければいけないでしょうし。現役を続けながら運営をやるのは確かに大変な部分もあると思いますが、過去の先輩方もずっとそうやって頑張ってこられたところもあります。ただ時代が明らかに変わっていまして、なかなかそういうことが難しいと考えている棋士もいると思いますので、その辺は議論して、どういう形がベストなのかということを考えていければいいのかなあと思います。なかなかすぐに今回でも切り替えるということは難しいことではありますが、時間はかかってもベストな形があれば模索していきたいという思いです。。
 青野専務理事 指名されておりませんけれども、この件に関して私の感想を言わせていただいてよろしいでしょうか。
 私は20代の頃から、今回で12年目になります、若い頃から自分の棋士と運営といろいろやらせていただきました。今回こんなことになったことに関しては本当に申し訳ないと思うが…。
 いま言われたことは20年以上前からずっと言われていたことであります。確かに将棋の棋士は運営面、経営面に関しては正直言って素人の集まりであります。ただ将棋という文化を我々が外部に発信をする、そして、それに伴う何らかのお金と言うか契約金なりをいただくということになりますと、やはりその、我々がやっていいかどうかというのは別ですけども、単なる全く将棋を知らない経営者・運営者、あるいは日本でも有名な財界の人を連れてきて、じゃあ将棋をお前のところやれよと言って1億、2億の金がぱっと入るかというと、多分そういう時代ではないと思うんですね。お金のことだけではなくて、支部の連合会とか地方支部などに行った時に、棋士が来て「我々も一生懸命やりますからお願いします」と言うからみなさんが動いてくれるんだと、お世辞でもそういうことを言ってくれる人がいますので。確かに棋士が運営をするということに関しては本当に素人ですし、対局も正直言って理事をやりながら勝ちまくっているという棋士はいません。私自身はこれからそういうふうなことをいろいろ聞いた中で、例えばの話ですけども、会長と外部の方の理事長の二本立てのような形で将棋連盟が運営できればいいかなというふうな思いは前々から思っています。どちらかだけが運営をやるというのは、多分、この将棋連盟のような文化を売ると言うのは変ですが、文化で収入を得る団体としては難しいんだろうなというふうに思いますので、そんなふうな形に将来なっていけばいいなと私は前々から思っておりました。

閉じる