竜王戦挑戦者差し替え事件―私的まとめ

 【2017年7月14日】

 目次に戻る

経緯の整理

 最後に改めて、2017年7月13日現在で分かっている情報により、一連の経緯を整理しました。第三者調査委員会の調査報告書(概要版)(連盟ホームページ掲載のpdf版pdf版を元に作成したhtml版)の記述を基本に、連盟の公式発表、各種マスコミ報道その他の情報を加え、各関係者の主張などもまとめてあります。
 出典の記事などへのリンクは2017年7月13日現在で確認しました(リンク先の記事がいつまであるかは分かりません)。またリンク先の各種ファイルのうち、12月27日の三浦九段の記者会見(書き起こし)、1月18日の谷川会長の辞任会見(書き起こし)の2つは今回新たに作成しました。それ以外は既出です。
 蛇足ですが、この事件の一連の経緯について、ネット上のWikipediaあたりのいい加減な記述をそのまま無批判に信用したり引用したりすることは絶対に禁物です。

 (調):調査報告書(概要版)
 (公):連盟の公式発表
 (報):新聞・テレビ報道(週刊誌などは含めない)
 (み):三浦九段側の主張
 (※):ニコニコ生放送、私が作成した書き起こし
 (他):その他(週刊誌、ツイッターなど)

<2015年>

3月14日~4月11日 電王戦FINAL
 斎藤慎太郎五段○―●Apery、Selene●―○永瀬拓矢六段、稲葉陽七段●―○やねうら王、
 ponanza○―●村山慈明七段、阿久津主税八段○―●AWAKE

5月3~5日 第25回世界コンピュータ将棋選手権。優勝ponanza、準優勝NineDayFever

11月17~19日 floodgateに「技巧」が参戦。レート1位になり、ponanzaにも勝利
11月21~23日 第3回電王トーナメント。優勝ponanza、準優勝nozomi、5位「技巧」

<2016年>

4月9~10日 第1期電王戦第1局。PONANZA○―●山崎隆之八段(叡王)

5月3~5日 第26回世界コンピュータ将棋選手権。優勝ponanza、準優勝「技巧」(独創賞、新人賞)
 「技巧」は2012年2月から開発が始まり、同年5月の第22回選手権に初参加し(Apery、AWAKE、Seleneなどと同期)、1次予選3位、2次予選18位だった。第26回は4年ぶり2回目の参加で、前年秋からの活躍で注目される中、1次予選、2次予選とも全勝で1位通過した(2次予選でponanzaに唯一の土をつけた)。
 なお新人賞は参加2回以内で優秀な成績を収めたプログラム、独創賞は独創的な技術やエンターテイメント性を示したプログラムで、「技巧」は「様々な技術を融合し、見事に強さに昇華した」と高く評価された。

5月21~22日 第1期電王戦第2局。山崎隆之八段(叡王)●―○PONANZA

6月1日 「技巧」v1.0.0公開(オープンソース化)
6月6日 「技巧」v1.0.1公開
(調)三浦九段は6月中旬~7月上旬頃、デスクトップ1台、ノートパソコン2台に「技巧」をダウンロードし、研究のために使用してきた。
(調)三浦九段は遅くとも夏頃までに、若手棋士から、スマホでパソコンを遠隔操作する方法があることを知ったが、スマホに遠隔操作アプリをダウンロードしたことはない。電子解析によれば、三浦九段のスマホから遠隔操作アプリは検出されなかった。
(み)8月頃、研究会の際に若手棋士がスマホで自宅のパソコンを操作しているのを見て驚き、「どうやっているの」と聞いた。若手棋士は三浦九段がパソコンに疎いことを知っていたため、詳しい説明はしなかった。スマホに遠隔操作アプリをインストールしたことはない(三浦九段が10月21日に出した2回目の反論文書)。

7月2日 「ShogiDroid」(スマホで「技巧」などの将棋エンジンが動作する将棋GUI)開発版公開
     (正式版公開は8月1日)
(調)三浦九段はスマホに「技巧」をダウンロードしたことはない。

7月11日 竜王戦決勝トーナメント準々決勝。郷田王将●―○三浦九段

7月26日 竜王戦決勝トーナメント準決勝。久保九段●―○三浦九段
(調)久保九段は夕食休憩後、三浦九段が自分の手番で午後6時41分~7時12分の31分間も継続して離席し、他にも離席が見られたことなどから強い不信感を抱いた。久保九段は当時時計を確認していたとのことであり、ヒアリングでも、かかる時刻を明言した。しかし、映像分析によると、三浦九段が60手目を指すまでの間の消費時間約43分間において、三浦九段は3回離席しているものの、その離席時間はそれぞれ約6分弱、約3分20秒、約5分弱の合計約14分間である。したがって、60手目に関して、久保九段が述べるような約30分間の離席の事実は認められなかった。
(他)『週刊文春10月27日号』(10月20日発売)の記事『将棋「スマホ不正」全真相(渡辺竜王独占告白)』で久保九段は「証拠は何もないんです。でも指していて(カンニングを)“やられたな”という感覚がありました」と話している。さらに記事によると、「対局後、久保九段はソフトに精通している知人に依頼し、三浦九段の指し手とソフトの手との一致率や、離席後にどんな手を指したかなどを検証した。その結果、久保九段の疑惑は確信に近いものになったという」。(※注:久保九段は翌春、王将位に返り咲き。この事件について、王将戦終了時に王将戦中継ブログのインタビューに「自分のなかで皆さんにお伝えできていない部分もあると思うので、その点は後日、説明したいと思います」と答えているが、7月13日現在、まだ説明はない)
(報)(12月27日の記者会見で)島常務理事「連盟が保存している映像ではなく、すぐに手に入らず、時間のなさとあいまって確認できなかった。12月の中旬すぎに渉外部で映像を確認する機会があり、その時に初めて知った。渉外部の職員に離席の分数を確認してもらった。それで根本が違っていた。竜王戦の第7局という段階だったので、その時に気づいてがくぜんとした」(朝日新聞デジタル2016/12/28)。

7月29日 連盟の関西月例報告会。久保九段が電子機器の規制を求める
(調)久保九段は「ある棋士が自分の手番時に約30分間も離席したことから不審に思い、会館内を探したが見つからなかった。対局後に検証したところ、この離席後の指し手と将棋ソフトの指し手が一致した」という事例を紹介した。久保九段はこの場では三浦九段との対局とは述べなかったが、後日、東常務理事に三浦九段との対局だったことを伝え、このことは谷川会長にも報告された。

8月4日 常務会。電子機器についての通知書を棋士・女流棋士に送ることを決定
     また常務会は、竜王戦挑戦者決定三番勝負で三浦九段の行動を監視することを決定
8月8日 「対局時における電子機器の取り扱いについて」の通知書を棋士・女流棋士に発送
(調)通知書は三浦九段に対する警告という意味合いも含むものだった。三浦九段は通知書を受け、どれくらいの離席が長時間の離席に当たるのかを観戦記者に相談するなどし、10分以上の離席が長時間の離席と判断し、以後、10分以上の離席をできるだけ控えるようにした。

8月15日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局。丸山九段○―●三浦九段
8月26日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局。三浦九段○―●丸山九段
9月8日  竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局。三浦九段○―●丸山九段
(調)第1局は青野専務理事と杉浦理事、第2局は中川常務理事と佐藤常務理事と杉浦理事、第3局は島常務理事と杉浦理事が、それぞれ夕食休憩後の三浦九段の行動を監視した。その結果、いずれの対局においても特別対局室のある将棋会館4階以外に行くことはなく、不審な行動は確認できなかった。このため三浦九段の行動確認はひとまず終了させることとした。
(調)丸山九段によれば、三浦九段に不審な行為はなかった。

9月20日 常務会。竜王戦七番勝負で金属探知機を使用して持ち物検査を行うことを決定
(他)ボディーチェックを厳格に行うことを主張したのは渡辺竜王(別冊宝島『将棋「名勝負」伝説』p49)。
(調)挑戦者の三浦九段も、常務会からこの措置について確認を求められ、了承した。

9月26日 連盟の東西合同月例報告会。普段の対局での電子機器の規制について話し合う
(調)報告会の議事録によると、三浦九段は「私たちがファンに疑われずに済む、私は疑われること自体が心外、対局前に余計なことを考えるよりは、いっそ丸裸にしてもらった方がすっきりして竜王戦に打ち込める」と発言した。三浦九段はこの時点で、ソフト指しを疑われている何人かのうちの1人に自分が含まれているという認識を持っていたが、疑いが自分のみに生じているという認識はなかった。

10月3日 A級順位戦。三浦九段○―●渡辺竜王
(調)渡辺竜王は対局中、三浦九段の離席数が多いと感じたが、ソフト指しをされたという印象は持たなかった。

10月4~7日 渡辺竜王が疑いを深める
(調)渡辺竜王は4日以降、観戦記者との意見交換、将棋ソフトに詳しい千田五段らとの意見交換、自らの「技巧」を用いた検証等により、三浦九段の離席の多さや、三浦九段の指し手と「技巧」の指し手との一致率に基づく疑惑を深め、さらに久保戦についての情報を得ていたこと等から、三浦九段が渡辺戦でソフト指しをしたのではないかという疑いが確信に近づいた。
(調)また同時に渡辺竜王は、三浦九段のソフト指し疑惑が10月中旬発売の週刊文春に掲載されるという情報をつかんでおり、このまま竜王戦七番勝負の開催中に記事が掲載され、そこで初めて疑惑が出るとなると、竜王戦が大混乱し、竜王戦や将棋界全体の信用が失墜すると考えた。

10月5日 連盟は電子機器に関する新しい内規を12月14日から施行すると発表
      ・電子機器は対局前にロッカーに預ける。
      ・対局中の外出(将棋会館の敷地外に出ること)は禁止する。
      ・対局中に電子機器を使用したことが発覚した場合は、除名を含む処分の対象になる。
(報)タイトル戦の対局は今後、それぞれルールを決める(毎日新聞)。タイトル戦の対応は主催者と協議して決める(朝日新聞デジタル)。タイトル戦については、連盟と主催者が話し合い決める(共同通信)。タイトル戦での対応については、主催者と対局者の意向に一任する(スポーツ報知)。
(※注:上記のとおり、タイトル戦の場合については、新聞によって書き方がばらばら。このことが1月開幕の王将戦でさっそく問題になる)

10月7日 渡辺竜王が島常務理事に連絡し、いわゆる極秘会合の開催を求める
(報)渡辺竜王によると、三浦九段の対局の指し手について、将棋ソフトの手順と似ているとの指摘が今月、報道関係者から寄せられた。調べたところ、三浦九段が勝った20局のうち、4局では、定跡手順を外れて以降の「一致率」が90%を超えた。渡辺竜王は「トップ棋士でも、ソフトとの一致率は高い人で平均約70%。三浦九段は離席が多く、感想戦で示す手もソフトと一致していた。不正の疑いが強い以上、理事会に対応してもらう必要があると判断した」と話した(朝日新聞デジタル2016/10/21)。
(他)渡辺竜王は11月1日のブログ記事「一連のこと。」で、常務会に対応を求めた意図について「10月上旬の時点で放っておいても三浦九段に対する報道が出る可能性が高いことを知りました。このまま竜王戦に入れば七番勝負が中断になる可能性もありますし、将棋連盟にとって最悪の展開は後に隠していたと言われることです。七番勝負が始まってから対応するのでは遅いので、この状況を常務会に報告。報道が出ることを知っていながら放置して最悪の状況を迎えるリスクを取るか、事前に三浦九段に話を聞くかのどちらかしかないわけで、後者を選ぶまでは止むを得なかった思います。三浦九段の対局中の行動及び、棋譜の観点からも疑問が生じている(ソフト指しがあったと断定はしていない)ことから、常務会が竜王戦の開幕前に三浦九段に話を聞く、までが自分の行動意図です」と説明した。

10月8~10日 第4回電王トーナメント。優勝Ponanza、準優勝「浮かむ瀬」、「技巧」は予選16位

10月10日 島常務理事の自宅に棋士7人が集まり、いわゆる極秘会合を開く
(調)集まったのは谷川会長、島常務理事、渡辺竜王、千田五段、羽生三冠、佐藤天彦名人、佐藤康光九段。
(調)関西にいた久保九段が電話で参加し、7月26日の久保戦について説明した。
(調)渡辺竜王と千田五段が、三浦九段の指し手や感想戦で述べた内容と「技巧」の一致率、離席の状況、三浦九段が研究会仲間の若手棋士から遠隔操作の方法を知ったことなどを説明した。
(調)渡辺竜王は、竜王戦七番勝負第1局の次週に週刊文春に記事が掲載されることを説明した。
(調)島常務理事は会合の後、三浦九段と電話で話し、三浦九段にソフト指し疑惑がかかっていることを伝え、11日午後1時から常務会に参加することについて了承を得た。三浦九段は、この電話により初めて、自分のみにソフト指しの疑惑がかかっていることを認識した。

(報)(10月21日の所属棋士への臨時説明会で)島常務理事は、渡辺竜王が「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」と、連盟幹部に強く対応を求めていたことを明らかにした(産経ニュース2016/10/21)。
(報)渡辺竜王は「不正を行った三浦九段と対局するつもりはない。常務会で判断してほしい」と要求した(毎日新聞2016/10/25)。
(他)渡辺竜王は11月1日のブログ記事「一連のこと。」で上記報道について釈明した。内容は「島さんが言ったとされる自分の発言については島さんとの間での言葉のあや、解釈の違い、さらに報道を介すことで自分の本意ではない形で世に出てしまいました。これについては島さんとも確認した上で『渡辺君の本意でないなら直したほうがいい』と言ってもらったので昨日の月例報告会と取材でその旨を伝えました。」
(他)渡辺竜王は2月13日のブログ記事「朝日杯とか。」で再び釈明した。今回の内容は「そもそも『剥奪でも構わない』という意思はないし、そんな言葉は使っていません。発言された方のせいにしたくなかったので、10月からずっと否定せずにいましたが、最近になって思い切って聞いてみました。すると、人づてに聞いたということで、それなら私が言ったと誤解するのも無理がないと思います。では伝えた人はどこから『剥奪でも構わない』が来たのかとなりますが『上に相談するくらいだから、それくらいの気概だろう』という想像からとしか思えません。(最近、名前が出た観戦記者の方ではないです。)」
(※注:11月1日の釈明と2月13日の釈明は内容が違い、後の釈明では、渡辺竜王と島常務理事の間にさらに別の人物が介在したことになっている。事実関係はどうなのか。また「タイトルを剥奪されても構わない」という発言はなかったとしても、「疑念がある棋士と指すつもりはない」に類する対局拒否発言はしていたのではないのか)

10月11日 常務会。三浦九段からの聴き取りに先立って、疑惑の内容を共有
(調)谷川会長、佐藤(秀)常務理事、島常務理事、中川常務理事、杉浦理事、渡辺竜王が出席し、関西から東常務理事、井上理事もテレビ電話で参加し、少し遅れて片上常務が出席した。
(調)渡辺竜王が疑惑の概要について約1時間かけて説明した。
(調)その後、三浦九段に遠隔操作について話したという若手棋士から聴き取りを行い、若手棋士は、スマホでパソコン上の将棋ソフトを遠隔操作する方法があることを教えたが、ダウンロードはしていないと答えた。

10月11日 常務会。午後1時頃から三浦九段の聴き取りを実施
(調)青野専務理事、千田五段も参加した。
(調)渡辺竜王と千田五段が三浦九段に対し、三浦九段の指し手(感想戦での読みの内容を含む)と「技巧」の指し手との一致率等を示しながら、長時間の離席や頻繁な離席を繰り返した理由について質問した。
(調)やり取りの中で、三浦九段は、このような状態では将棋を指すことはできないとして、しばらく休場をしたい旨を申し出た。ヒアリング、聴き取りを記録したメモ等によれば、三浦九段は、誰かに求められたものではなく、自らかかる申し出をしたものと認められる。ただし、多数の者による追及的な雰囲気の中で、やむを得ず申し出をした側面があったことは否定できない。
(調)聴き取りの後、聴き取りの要点を確認した録音によると、片上常務理事が三浦九段の意向の確認として「当面は休場扱いにしてもらって、その間に徹底的に調べて欲しい」と述べたのに対し、三浦九段は「はい」と述べ、さらに片上常務理事が「今の状態だったら、ちょっと将棋はさせないのでということで」と述べた。
(報)(12月27日の記者会見で)青野専務理事「常務会から休場を申し出た、強要したということは間違いなくありません。一致率とか色々言われている中で、本人が『そこまで疑われているのであれば将棋は指せない』ということで『休場』という言葉を使った。であれば『休場届を出してくれ』ということであって、連盟の側から『休場届を出してくれ』と言ったことは、間違いなくありません」。中川常務理事「島理事が電話で席を外したときに、三浦九段の口から『こういう状態では竜王戦は指せない。事態が収束してから集中して指したい』と。休場については三浦九段から複数回発言があり、それに伴って休場届の提出を求めたというのが事実です」。島常務理事「10日の『黒』の空気があり、11日も…その時に自分が完全中立だったかというと、そうではなかったと言わざるを得ない。そういうことで三浦さんが結果的にそういう気持ちになってしまった。休場届を強要したという事実は、まったくない」(朝日新聞デジタル2016/12/28)。

(調)三浦九段は聴き取りの場でノートパソコン2台を連盟に預け、聴き取りの後、自宅のデスクトップパソコンを提出するために連盟職員とともに自宅に向かった。その途中、三浦九段は、連盟のこれまでの対応等から電子機器について公正な解析がなされるか疑問を持っていたことから、代理人弁護士と電話で相談し、代理人は、スマホは画面の写真を撮影して提出すれば足りるのではないかと述べ、スマホについては画面の写真を提出するにとどめた。
(み)疑惑を持たれたので、連盟からの要望がなかったにもかかわらず、ノートパソコン2台、デスクトップパソコン2台、スマホの全アプリを撮影した画像を提出した。これらを精査してもらえれば身の潔白が晴れると信じていたが、連盟はこれらを精査することなく、一方的に出場停止処分を下した。今後も連盟の調査に最大限協力する。それにより疑惑が晴れると信じている(三浦九段が10月18日に提出した1回目の反論文書)。

10月11日 連盟から読売新聞社に、竜王戦の挑戦者変更について理解を求める
(調)聴き取り後、島常務理事は読売新聞社の将棋担当記者に、将棋会館の理事室で、三浦九段から竜王戦七番勝負を休場する意向が示されたと伝えた。その後、島常務理事と杉浦理事が読売新聞社を訪れ、竜王戦の挑戦者を丸山九段に変更することについて理解を求めた。
(調)連盟は、遅くとも12日の午前中までに読売新聞社から挑戦者を丸山九段に交代することについて了承を得ていた。

10月11日 連盟から三浦九段に、12日午後3時までに休場届を出すように求める
(調)読売新聞社に行った後、杉浦理事は連盟職員を通じて三浦九段に、休場届を早急に提出するよう伝えた。三浦九段は、休場届の提出の可否については、12日に代理人弁護士と直接会って話し合った後に決めたいと答えた。連盟は、竜王戦七番勝負が15日に迫っていたことを踏まえ、三浦九段に、12日午後3時までに休場届を提出しないと厳しい処分を行うと伝えた。

10月11日 深夜、連盟から丸山九段に、竜王戦七番勝負への出場を要請
(調)島常務理事、青野専務理事、杉浦理事は、将棋会館の理事室で、丸山九段に対し、三浦九段が竜王戦七番勝負を休場することを説明し、竜王戦七番勝負への出場を要請した。
(報)丸山九段は「(交代は)びっくりして一度は拒否した」(毎日新聞2016/12/22)。

10月12日 午後1時頃、三浦九段側から連盟に、休場届は提出しないと連絡
(調)休場届の提出期限であった午後3時の2時間程度前に、三浦九段代理人から島常務理事に対し、休場届は出さないとの電話連絡があった。

10月12日 常務会メンバー6人で、三浦九段の出場停止処分を決定
(調)谷川会長、片上常務理事、佐藤(秀)常務理事、島常務理事、中川常務理事、杉浦理事は協議の上、三浦九段を10月12日から12月31日までの出場停止処分にすることを決定した。

10月12日 午後7時頃、竜王戦七番勝負の挑戦者変更をマスコミ発表
       午後7時25分、連盟ホームページに「第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について」掲載
(公)第29期竜王戦七番勝負について、挑戦者の三浦弘行九段が出場しないことになりましたので、お知らせいたします。対局規定により、挑戦者決定戦に出場した丸山忠久九段が繰り上がりで渡辺明竜王と対局することになります。当連盟は12日、三浦九段を2016年12月31日まで出場停止の処分といたしました。今回の挑戦者の変更については、主催の読売新聞社からもご了承を得ております。
(公)丸山九段コメント「日本将棋連盟の決定には個人的には賛成しかねますが、竜王戦は将棋の最高棋戦ですので全力を尽くします」。
(※注:この公式発表には出場停止処分の理由が書かれていない。以後、12月26日に第三者調査委員会の報告が出るまでの間、連盟ホームページに掲載された公式発表は、第三者調査委員会の設置、第三者調査委員会の初会合開催の2件のみ。また、読売新聞社からは挑戦者変更についてのコメントはまったく出ていない)

10月12日 午後7時50分前後、マスコミ各社から「ソフト指し不正の疑い」という情報が流れ始める
(報)(連盟は三浦九段に)対局中、スマートフォンなどに搭載の将棋ソフトを使って不正をした疑いもあるとして、説明を求めたという(朝日新聞デジタル)。
(他)東京新聞文化部は「背景には将棋ソフトの問題があるとみられます」とツイート。

10月12日 午後8時過ぎ、島常務理事と杉浦理事が記者会見
(報)島常務理事の説明によると、三浦九段は不自然な離席が多いという指摘が棋士からあった。11日に聴き取りを行ったところ、三浦九段は「他の部屋で休んでいた」と説明して不正を否定したが、「疑念を持たれたままでは対局できない」として休場を申し出た。しかし休場届が提出されなかったため、出場停止処分にした(各社ほぼ同じ内容)。島常務理事は「公式戦の終盤で、一手ごとに離席するなど疑義を招く行為があった」「タイトル戦の開催が迫っており、混乱を避けるため処分した」と説明した(日本経済新聞)。

(報)スマートフォンなどに搭載の将棋ソフトを使って不正をした疑いもあるとして(朝日新聞デジタル)。将棋ソフトを不正利用しているという疑惑が浮上(毎日新聞)。将棋ソフトを利用したとの疑いが持たれている(日本経済新聞)。スマートフォンを通じて将棋ソフトを使い、不正をしているのではと、過去の対戦相手から疑問が指摘されていた(共同通信)。将棋ソフトを用いた不正を行った疑念があるとして(東京新聞)。
(※注:スマホ単体の将棋アプリ使用か、それとも遠隔操作か、あるいは協力者からの情報伝達か、この時点では不明だが、共同通信の記述は遠隔操作とも受け取れる)

(み)三浦九段はマスコミ各社の取材に「濡れ衣で、不正はしていない。今後の対応は弁護士と相談する」とコメント。

(他)大平武洋六段は「離席という事になっていますが、言われていたのは『一致率』しかし、それで黒認定はいいのかは、個人的には疑問です」とツイート。
(報)三浦九段の指し手がソフトの手と一致することが多いという指摘が一部の棋士から出ていた(朝日新聞デジタル続報)。(※注:この朝日新聞の続報は、おそらく記者会見ではなく、何人かの棋士への独自取材に基づくもの。一致率の話はこの時点ではまだ連盟の表向きの説明には出ていないが、この記事により、三浦九段が一致率を根拠としてソフト指しを疑われているということが周知の事実となった)

(他)渡辺竜王は10月12日のブログ記事「竜王戦。」で「大変な事態になってしまいましたが、引き続き将棋界へのご声援を宜しくお願いします。詳細は各種報道に任せて、ここでは省略します」とコメントした。
(報)渡辺竜王は本紙の取材に「残念です。(将棋ソフト問題で)疑わしい要素がいくつか出ている状況で、やむを得ない措置ではないかと思う」と話した(東京新聞)。
(※注:この時点では、告発者が他ならぬ渡辺竜王自身だということは明かされていない。それが初めて明らかになるのは、10月20日発売の『週刊文春10月27日号』によってである)

10月13日 島常務理事が再び記者会見。追加調査は行わない考えを示す
(報)島常務理事は「三浦九段を出場停止処分にしており、聴取は尽くした。こちらから連絡するつもりはない」と話した(共同通信)。
(報)島常務理事は、三浦九段に対する調査の要望は5人前後の棋士からあったと説明。「聴取はすでに尽くしており、聞き取り調査を今後行う予定はない」と述べた(毎日新聞)。
(報)連盟は、三浦九段の対局中の不自然な離席を5人前後の棋士が指摘し、対応を求めていたことを明らかにした。連盟によると、7月以降、「三浦九段が対局中に十数分、席を外す」「1手ごとに席を立つ」などの指摘が対戦相手らから相次いだ。島常務理事は、事情を聴いた常務会について「材料を十分準備して臨んだ。ここでは多くを語れない」と話し、離席の多さ以外に不正が疑われる内容を把握していることを示唆した(朝日新聞デジタル)。

(み)三浦九段の担当弁護士は13日、日本経済新聞の取材に「状況証拠しかない中で一方的に決められた処分で、撤回を求めたい」と話した(日本経済新聞)。

10月14日 連盟から三浦九段に、出場停止処分についての通知を送付
(調)通知書には「2016年10月11日、休場の意向を示されましたので、休場届の提出を求めましたが、期限までに休場届が提出されませんでした。第29期竜王戦七番勝負第1局が10月15日と迫っていること、10月14日には前夜祭も行われる等関係者への影響が甚大なこと等を総合的に判断し、常務会では貴殿へ下記の通りの処分を決定しましたことを通知いたします」という説明と共に、処分内容が「出場停止(2016年10月12日~2016年12月31日)」であることが記載されていた。

10月14日 竜王戦七番勝負の前夜祭。谷川会長が主催社とファンにおわび
      (七番勝負第1局は15~16日)

10月14~17日 常務会メンバー残り3人から、出場停止処分について追認を得る
(調)処分決定時には常務会のメンバー9名のうち6名しか協議に参加していなかったため、14日から17日午前中までの間に、残りのメンバーからの追認を得た。

10月18日 三浦九段が1回目の反論文書を発表
(み)毎日新聞朝日新聞デジタル産経ニュースが反論文書の全文を掲載。三浦九段の主張は「対局中に将棋ソフトを使用していたことは一切ない。竜王戦に出場できないことや休場届の提出は、全くの濡れ衣である将棋ソフト使用疑惑によるものであり、適正な手続きによる処分とは到底言い難い」「連盟に対し、離席が多いことやコンピュータとの一致率が高いことを示す証拠を書面により提出して欲しいと求めているが、これらの資料の開示はなされていない」など。
(報)連盟はこれに対し「三浦九段は対局中に長い時間にわたり離席するなど不自然な点が多かったにもかかわらず、合理的な説明はありませんでした。事情を聴いた当連盟に対して休場届を出す意向が示されたにもかかわらず、提出されないので、やむを得ず出場停止処分としたものです」とする見解を公表した(東京新聞)。

10月18日 三浦九段がNHKの単独インタビューに応じ、不正を否定
(み)三浦九段の主張は「竜王戦は将棋界最高峰の棋戦で挑戦するだけで大変な名誉。辞退するわけがない」「(休場届については)やましいことは全くないので出す必要はない。そういうことで休場届は提出しないと決めた」「公平にしっかりと調べてほしい。完全にやっていないことがわかったら白い目で見られずに指せるので一刻も早く調べてほしい」など。
(報)連盟は、今後も、対局中の離席が多いことや、将棋ソフトを不正に使った疑いがあることなど三浦九段と見解が異なる点について、調査を続けていくとしています(NHK)。

10月19日 週刊文春WEBにスクープ速報『将棋「スマホ不正」問題を渡辺明竜王が独占告白』掲載

10月20日 午前0時、羽生三冠が妻のツイッターアカウントでコメントを発信
(他)羽生三冠のコメントは「今回の件は白の証明も黒の証明も難しいと考えています。疑わしきは罰せずが大原則と思っていますので誤解無きようにお願いを致します」。

10月20日 『週刊文春10月27日号』発売。『将棋「スマホ不正」全真相(渡辺竜王独占告白)』掲載
(他)この記事で明らかになったことは、▽疑惑の発端は7月26日の久保戦(離席の多さ、一致率)。▽一部棋士の間で疑惑がささやかれ始めたのは8月ころ。▽10月3日の渡辺戦のネット中継を見ていた棋士が一致率の高さを渡辺竜王に指摘。▽(10月4~7日ころ)週刊文春と大手新聞社の記者が疑惑の情報を把握済み。▽10月7日に渡辺竜王が常務会に疑惑を告発し、10月11日の聴き取りの場まで追及を主導。▽10月10日の夜、島常務理事の自宅で棋士7人が「極秘会合」。▽千田五段が一致率の検証に関与。▽疑惑が持たれているのは久保戦(7月26日)、丸山戦2局(8月26日、9月8日)、渡辺戦(10月3日)の計4局。▽渡辺竜王が指摘した疑惑の根拠は①離席の多さとタイミング、②三浦九段の指し手とソフトの一致、③三浦九段が感想戦で示した読み筋とソフトの一致。▽具体的に疑われているのは「技巧」の遠隔操作。▽10月11日の聴き取りで三浦九段は「離席は、疲れていたので守衛室で横になって休んでいた」と説明―など。
(※注:最初に週刊文春が疑惑をつかんだ時期と経緯は不明だが、この記事は明らかに渡辺竜王と島常務理事の協力で得た情報を元にして構成されたもので、この記事によって多くの情報が初めて表に出た)

10月21日 連盟が所属棋士への臨時説明会(非公開)を開催
      (午前10時から、東京と関西の将棋会館をテレビ会議システムで結び、約140人が出席)
       常務会はそれまでの方針を転換し、調査チームを設置して調査することを表明
       常務会は12月14日から施行する電子機器に関する新しい規定の前倒しに協力を要請
(報)説明会の冒頭、谷川会長、島常務理事らが三浦九段の処分に至った経緯を説明。将棋ソフトに詳しい千田五段が、個人的立場で最近の三浦九段の指し手とソフトの指し手について解説した(産経ニュース)。
(報)説明会では、棋士から「徹底的に調査して欲しい。うやむやに終わらせてはならない」「仲間内で泥仕合をするのはいいことではない」などの声が上がったという(朝日新聞デジタル)。
(報)連盟の対応については賛否両論だったが、批判の声も複数上がったという。一部の棋士が問題視したのは、三浦九段が不正を行ったとする明確な証拠を示さないまま、連盟が処分を下したこと。反対に、一致率が高いという事実を現状では根拠としていることについて、丸山九段らから疑問の声が上がったという。丸山九段は終了後、取材に応じ「発端から経緯に至るまで(連盟の対応は)疑問だらけです」とし、一致率を処分の根拠としていることについても触れ「僕はコンピューターに支配される世界なんてまっぴらごめんです」と強い口調で言っていた(スポーツ報知)。

(報)渡辺竜王は対局のため欠席した(朝日新聞デジタル)。(※注:渡辺竜王と久保九段は午後1時から関西将棋会館で王将戦挑戦者決定リーグ戦)
(報)(羽生三冠は夕方から叡王戦準々決勝の対局があり、対局後に取材に応じた)羽生三冠は「今はまだ(調査などを)何もしていない状態なので、現時点ではどちらとも言えません。成り行きを見守っていかないと」とした。対局前には説明会に出席。「(棋士から)いろいろな意見がありました。なかなかひとつの方向で行こう、という感じではなかったと思います」と説明。自身は発言しなかったという(スポーツ報知)。

10月21日 臨時説明会の後、谷川会長と島常務理事が改めて報道陣に経緯を説明
       谷川会長は、電子機器への対応の遅れについて反省を示す
(報)谷川会長によると、三浦九段が対局中、不自然な離席を繰り返しているという指摘が7月下旬にあったことから、8月上旬、全棋士に不必要な離席を避けるよう求める文書を送った。竜王戦挑戦者決定三番勝負では、三浦九段が頻繁に離席する状況を理事らが確認していた。また谷川会長は、電子機器への対応の遅れについて「何年も前から厳しい規定を作った方がいいという意見はあったが、棋士がそんなことをするわけがないという思いがあった」「反省しており、批判を受けなければいけない」と述べた(東京新聞)(※注:常務会は説明会で棋士向けには一致率について説明したが、報道陣向けにはその説明はなく、もっぱら三浦九段が頻繁に離席したのが悪いという説明に終始したとみられる。また、竜王戦挑戦者決定三番勝負で頻繁に離席するのを確認したという部分は、常務会メンバーが三浦九段を監視していたことに関係する、おそらく最初の報道)。
(報)説明会で島常務理事は、7月末の対局で三浦九段に不自然な離席があるとの指摘が発端だったことを報告。さらに今月3日の対局でたびたびの離席と不自然な指し手に疑惑を抱いた渡辺竜王が、「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」と、連盟幹部に強く対応を求めていたことを明らかにした(産経ニュース)。
(報)島常務理事は「来週から顧問弁護士を中心とした調査チームを立ち上げる」との意向を示した(共同通信)。島常務理事は「第三者が立ち会って調べた方が良いと考えている」と話した(朝日新聞デジタル)。

10月21日 三浦九段が2回目の反論文書(週刊誌報道への反論)を発表
(み)毎日新聞が反論文書の全文を掲載。三浦九段の主張は「遠隔操作について、若手棋士は私に詳しい説明はしなかった」「自らの潔白を証明するため、スマホと4台のパソコンを信頼のおける調査会社等に提出し、解析を行ってもらおうと考えている。家族のスマホやパソコンも調査対象に加えたい。解析結果を私や連盟が入手する前に、調査会社等から直接世間に発表してもらおうと考えている」「本来これらの作業は、疑いをかけた連盟が実施すべき。なぜ、私が自らこのようなことを行わざるを得ないのか」など。

10月24日 理事会。正式に第三者調査委員会の設置を決定

10月27日 連盟ホームページに「第三者調査委員会設置のお知らせ」掲載
(公)委員長には但木敬一氏(弁護士、元検事総長)が決まりました。出場停止処分の妥当性、三浦九段の対局中の行動について、調査を要請しました。
(※注:実際に調査を委嘱した事項は、「三浦九段が公式戦の対局中に、スマホ等の電子機器を通じてソフト等を使用し情報を得て、それを自らの対局に用いた事実の有無」と「連盟の三浦九段に対する処分の妥当性」の2つ。なぜお知らせで「ソフト指し不正の疑い」に関わる表現を避けたのか、まったく意味不明)。
(報)委員の人選、調査期間などについては但木弁護士に一任したという(毎日新聞)。

10月31日 連盟の東西合同月例報告会。渡辺竜王が経緯を説明
(報)終了後、渡辺竜王が取材に応じ、今回の問題について公の場で初めて言及した。渡辺竜王は「三浦さんを処分してほしいとは全く言っていないですし、ファンの皆さんや棋士の間にも本意とは違う形で間違って伝わってしまっています」を否定。また「(三浦九段を処分しないなら)竜王戦は指さない(出場しない)。タイトルを剥奪されても構わない」などと発言したとされることについても、事実ではないとした(スポーツ報知)。

11月1日 渡辺竜王がブログ記事「一連のこと。」で自身の行動について釈明
(※注:ブログ記事の内容は10月7日、10月10日の項を参照)
11月2日 渡辺竜王が連日の更新でブログ記事「最後に。」掲載
(他)渡辺竜王のブログ記事の内容は「週刊文春に掲載された記事内容は、個人的にはおおむね間違っていないように思いますが、矛盾の印象を与えそうな言葉や、本意では伝わらない恐れがある表現は、誤解を解くような努力をしなくてはいけなかったと反省しています」―など。(※注:週刊文春の記事は渡辺竜王が教えた通りに書かれているのだから、渡辺竜王が「間違っていない」と思うのは当たり前である)。

11月4日 第三者調査委員会が初会合を開催
      連盟ホームページに「第三者調査委員会の開催について」掲載

11月7日 三浦九段が3回目の反論文書を発表
(み)産経ニュースが反論文書の全文を掲載。三浦九段は、連盟に提出したパソコンの調査がまだ行われていないことを明かし、手元にあったスマホを独自に解析会社に調査してもらった結果を公表。第三者調査委員会の設置に触れて「出場停止処分の妥当性に疑義があるのであれば、まずは出場停止処分を撤回してから調査にあたるべき」「私が対局中に将棋ソフトを使用したという疑惑は、単なる憶測に基づく誤った事実。なぜ、根拠もなく出場停止処分を継続するのでしょうか」と、出場停止処分の即時撤回を求めた。

11月17日 A級順位戦5回戦の最後の1局が終了し、三浦九段の不戦敗(対屋敷九段)が確定

11月19日 囲碁・将棋チャンネルHP将棋コラム「離席について」削除
(※注:内容はプロの離席を常識的な範囲内で肯定的にとらえるもの。まったく問題ない内容だが、連盟が棋士に離席を控えるように求めている矢先、不適切と判断しての削除か。連盟からの圧力か、連盟への忖度かも不明だが、いずれにしても過剰反応)

12月10日頃 三浦九段の新春上州将棋祭り(1月3~4日)出演が取り消される
(報)上州将棋祭りへの三浦九段の出演が、本人の承諾なく取りやめになっていたことが分かった。複数の関係者によると、12月10日ごろ、連盟やヤマダ電機のホームページから三浦九段出演の告知が削除された。毎年出演していただけに、三浦九段は27日に東京都内で開いた記者会見で「承諾なしに出演がキャンセルされた。将棋ファンと交流できる、処分明け最初の行事だっただけに残念」と話した(毎日新聞2016/12/28)。
(※注:連盟は12月29日になってホームページに『「第7回 上州将棋祭り」出演者変更について』を掲載した。当初(昼過ぎ)の内容は「将棋連盟の事情により出演者変更をいたしました。関係各位にお詫び申し上げます」だったが、夕方「当初出演を予定しておりました三浦弘行九段を、将棋連盟の事情により他の棋士に変更しております」に変更された。なお、この記事は現在はホームページから削除され残っていない)

12月11日 第2期叡王戦で佐藤天彦名人が優勝。翌春、PONANZAと対戦することが決まる

12月20日 A級順位戦6回戦の最後の1局が終了し、三浦九段の不戦敗(対行方八段)が確定

12月22日 竜王戦七番勝負が終了。渡辺竜王4―3丸山九段で、渡辺竜王が防衛

12月26日 第三者調査委員会が連盟に調査報告書を提出。記者会見で概要を公表
(※)ニコニコ生放送 日本将棋連盟第三者調査委員会記者会見
(※)第三者調査委員会の調査報告書の概要(書き起こし)
(※)第三者調査委員会の記者会見の質疑応答(書き起こし)
(調)調査報告書の要点は、調査事項①(不正の有無)については「三浦九段が不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」、調査事項②(本件出場停止処分の妥当性)については「非常事態における措置として、当時の判断としてはやむを得なかった」。また、第三者調査委員会の提言として「将棋ソフトの棋力の向上により、今や将棋連盟は未曾有の危機に直面している。将棋連盟は、そうした事態を直視し、的確に対処する責任がある」「将棋連盟は、三浦九段を正当に遇し、その実力をいかんなく発揮できるよう、諸環境を整え、一刻も早く将棋界を正常化されるよう要望する」。

12月26日 連盟ホームページに「第三者調査委員会による調査結果について」掲載

12月27日 理事会。第三者調査委員会の報告を受けて対応を協議

12月27日 三浦九段が記者会見
(※)ニコニコ生放送《将棋ソフト使用疑惑は不正なし》三浦弘行九段 記者会見 生中継
(※)三浦九段の記者会見(書き起こし)
(み)記者会見での三浦九段のおもな発言は、▽第三者委員会の発表には、まず驚いた。疑惑の発端となった30分の離席がなかったということで、それならそもそも疑惑自体がなかった。それに竜王戦挑戦者決定三番勝負で理事が私を監視して不審な点はなかったのだから、そのまま私を竜王戦七番勝負に出場させればよかった。▽(連盟に求めたいことは)元の状態に戻してほしい。かなわないんでしょうけれども、竜王戦をやりな…まあ難しいんでしょうけどね、元の状態に戻してほしい。
(み)記者会見での横張弁護士のおもな発言は、▽大前提として、第三者委員会は将棋連盟が多額のお金を出して雇っている弁護士なので、残念ながら、依頼者である連盟さんのほうを有利に書いてしまうというのは致し方ない。▽まず「不正の有無について」で「三浦棋士が不正行為に及んだと認めるに足りる証拠はない」というのは明らかに事実であり、いくら調べても不正の証拠は出てこないのはこちら側で分かっていたので、この結論については、当然のことではあるが、事実として評価できる。▽しかし「出場停止処分の妥当性」で「当時の判断としてはやむを得なかった」というのは、依頼者である将棋連盟に寄り添った意見で、きわめて不当。
(み)10月11日の聴き取りでの休場をめぐるやりとりについて、横張弁護士は三浦九段の話として、「職員から電話を取り次いだ理事が会議室に戻ってきて『今回の竜王戦七番勝負が開催されないことになりました』と報告し、その上で理事は『竜王戦が開催されなくなった。それを承知してくれるか』と三浦棋士と渡辺竜王おのおのに尋ねた」と説明した。

12月27日 会長・専務理事・常務理事が記者会見(ビデオ撮影は拒否)
       連盟ホームページに「第三者委員会調査結果を受けて」掲載
(報)朝日新聞デジタル 離席発言「真偽の調査を怠った」 将棋連盟の説明詳細
(報)産経新聞 日本将棋連盟会見詳報「週刊誌に記事が…出場停止はやむを得ない判断だった」
(公)(谷川会長の会見要旨)▽今回の報告書では、三浦九段は不正を行っていないこと、常務会が出場停止処分を取ったのは妥当であること、この2つの結論を頂いた。▽常務会の判断が妥当だったとは言え、結果的に三浦九段につらい思いをさせてしまいましたことは本当に申し訳なく思っている。▽常務会として反省すべき点がある。電子機器の取り扱いに関する規定を整えるのが遅れたこと、今回の件の発端となった久保九段の発言の真偽(離席の時間、一致率)について確認を怠ったこと。▽三浦九段のA級順位戦の5~9回戦は不戦局とし、今期は降級1名として三浦九段は来期A級の地位を保全する(来期はA級11位)▽棋士が疑心暗鬼に陥らずに盤面だけに集中できる形を、再度検討していく。
(報)(執行部の責任について)谷川会長は「理事会を開いて外部理事の方にもご意見をいただいた。10月11日、12日の常務会の行ったことが『妥当』と報告をいただいたので、責任をとる必要はないとのお答えだった」「電子機器の取り扱いの規定を厳しくすることを怠った、久保九段の発言が正しいかどうかの調査を怠った―この2点に関しては常務会の責任。(理事8人の)減給処分を決定した」(朝日新聞デジタル)。
(報)(処分の妥当性について)青野専務理事は「クロかシロかという問題ではなく、その時点で週刊誌に記事が出るということが判明した。本当に七番勝負が終わってしまう可能性があると。どうしたらいいかわからない状況の中で、一致率とかで責められて三浦九段が休場したいと。休場してもらえば、一番いい形で、一番いい形というのは変ですけど、挑戦者交代になれば被害としては一番軽く済むのではないかと。その時点では、挑戦者を代えるか、週刊誌の袋だたきに遭うか、あるいは竜王戦を延期していただくか。3つの選択肢だった」(朝日新聞デジタル)。

<2017年>

1月3日 三浦九段が新春上州将棋祭りこども将棋大会の開会式にサプライズ登場しあいさつ
(報)三浦九段は当初、この将棋大会の審判長を務める予定だった。しかし、イベントの出演者を決める共催の日本将棋連盟が昨年末、本人の同意なしに取り消した。その後、ヤマダ電機側が連盟と三浦九段に働きかけ、急きょあいさつすることが決まった(朝日新聞デジタル)。三浦九段は毎年出席してきたが、連盟は「混乱を避けたい」として今年の出席を取り消した。しかし、ヤマダ電機が「名誉回復の機会に」と掛け合い、あいさつの場が設けられることになった(毎日新聞

1月8日 第66期王将戦七番勝負が開幕(郷田王将に久保九段が挑戦)。金属探知機は使用せず
(報)今回の王将戦では、対局者の意向もあって金属探知機の検査は見送られた。両対局者は7日夜までに電子機器を預けた(毎日新聞)。
(他)検査について主催社から打診を受けた郷田は「私は『やるならやってください。判断はお任せします』と話しました。拒否はしていません」と語った。久保は「私は何も尋ねられていません。報道には驚いています」と話した(『将棋世界2017年3月号』p13-14)
(※注:金属探知機の使用を見送った経緯について、2つの報道の内容が食い違っている。この食い違いについて、毎日新聞からの説明はない)

1月16日 連盟ホームページに「第三者調査委員会からの結果報告書の開示」掲載
(公)第三者調査委員会の調査報告書(概要版)連盟ホームページ掲載のpdf版
(※)pdf版を元に作成したhtml版

1月17日 第三者調査委員会の調査報告書(概要版)のドラフト版の存在が発覚
(他)ねとらぼ 将棋棋士のスマホ不正疑惑、第三者委報告書のドラフト版が存在
(※注:ドラフト版はいわば草稿で、それが存在すること自体には別に問題はないが、ドラフト版と公開版の差異の比較から、公開版には常務会による恣意的な改変が加わっているのではないかという疑惑が残っている)

1月17日 第29期竜王就位式。渡辺竜王が謝罪
(報)渡辺竜王あいさつ冒頭「まず始めに、今回の件では7番勝負の直前というタイミングでメディアの取材に応じたことにより、三浦九段、読売新聞社さま、また将棋ファンの皆様方にご迷惑をお掛けしました。お騒がせしたことを申し訳なく思いますし、今後はこのようなことがないように将棋連盟の一員として将棋界の発展に努力して参ります」(スポーツ報知・渡辺竜王あいさつ全文

1月18日 谷川会長が辞任を表明。島常務理事も辞任の意向
(他)ニコニコニュースORIGINAL 谷川会長の辞任会見【全文書き起こし】
(※)谷川会長の辞任会見(書き起こし)
1月18日 午後4時、連盟ホームページに「会長の辞任に関するお知らせ」掲載
(公)谷川会長「この度、会長を辞任させて頂くことと致しました。第三者調査委員会から報告書を頂き、年末年始をはさんでいろいろと考えた結果、将棋ファンの皆様、主催社・協賛社の皆様、そして三浦弘行九段に誠意をお伝えするには、会長が辞任するのが一番、という結論に至りました。加えて、昨年の十月以降、対応に苦慮する中で心身ともに不調をきたすようになってしまいました」。
(※注:谷川会長は辞任会見をしましたが、同時に辞任した島常務理事は辞任の理由や自身の責任などについて何の説明もしていません)

1月18日 棋士の間に、他の理事の責任を問う声がくすぶる
(報)あるベテラン棋士は「そもそも竜王戦の挑戦者を代えるという判断があり得なかった。他の理事が居残るのは納得がいかない」と憤る(朝日新聞デジタル)。一部の棋士は理事らの解任を求めるため、臨時総会の開催に必要な署名集めを始めていた(朝日新聞デジタル)。棋士の間では連盟役員の責任を問う声がなおくすぶっており、「辞めて疑惑に関する問題が終わるわけでもない。誰もがすっきり対局できる状態を早く作るには、強力なリーダーシップが必要だ」と話す棋士もいた(毎日新聞)。十分に調査せずに出場停止処分を決め、三浦九段から“棋士の命”である対局の機会を奪った執行部には当初から「拙速だ」との批判があった。さらに「不正の証拠はなかった」と認定されたにもかかわらず、会長らの処分は減給にとどまり、「軽すぎる」との声が上がった。棋士の間には理事総退陣を求める動きも出ていた(日本経済新聞)。

1月19日 理事会。谷川会長と島常務理事の辞任を承認、2月6日に臨時総会を開き後任を選ぶことを決定
      連盟ホームページに「臨時総会のお知らせ」掲載

1月23日 連盟の東西合同月例報告会。一部の棋士が他の理事たちの信任を問う
(報)一部の棋士からは青野専務理事ら他の5人の理事の辞任を求める声も上がった。執行部は、臨時総会で5人の信任投票を行うかどうかを検討する方針を示した。現在の理事の任期が6月までであるため、「他の理事は辞めなくて良い」という意見もあったという(朝日新聞デジタル)。一部の棋士からは他理事の信任を問う請求書が提出され、2月6日の臨時総会の議題に挙げるかを今後開催される理事会で検討することになった(スポニチ)。
(他)田丸昇九段のブログ記事「三浦九段の問題で東西の棋士が数多く出席した1月23日の月例報告会の模様」

1月25日 理事補充選挙の立候補受付締切。佐藤康光九段と井上慶太九段が届け出

2月3日 『将棋世界2017年3月号』発売。「第三者委員会の報告を受けて(日本将棋連盟常務会)」掲載

2月6日 臨時総会で理事2人補充選任。続いて理事会で佐藤康光九段を会長に互選
(※)佐藤康光会長の就任会見(書き起こし)
2月6日 午後5時半過ぎ、連盟ホームページに「日本将棋連盟新役員のお知らせ」掲載
(公)佐藤会長あいさつ「昨年末の第三者調査委員会の報告で三浦九段の疑惑が晴れ、2月13日が復帰戦となります。これから素晴らしい将棋、活躍を見せてくれるものと思います。今後三浦九段の名誉回復、並びに将棋界の信頼回復に努めてまいります。今回を機に組織、対局規定など日本将棋連盟を改めて見つめ直し、時代に即して変えるべきところは変え、残すべきところは残す」。

2月6日 総会の前に棋士28人が、専務理事・常務理事5人の解任議案を議題とする臨時総会の開催を請求
     総会後の理事会で、2月27日に臨時総会を開くことを決定
(※)佐藤康光会長の就任会見(書き起こし)
(報)専務理事と常務理事のうち、今回職にとどまった5人に対する解任要求を審議する臨時総会開催の請求が28人の棋士からあった。理事会は、27日に臨時総会を改めて開き、審議することを決めた(毎日新聞)。
(他)田丸昇九段のブログ記事「佐藤康光九段が将棋連盟の会長に就任した2月6日の臨時総会の模様」によると、棋士28人が理事5人の解任を求めた理由は、①正会員である棋士の立場を守らず、棋戦運営に支障をきたした、②将棋連盟の信用を大きく損ねた、③将棋連盟に多大な金銭的損失を与えた、④正会員に対して説明義務を果たしていない―など。
(他)田丸昇九段のブログ記事「5人の理事への解任動議が議決される2月27日の臨時総会」

2月7日 iRONNA『「どうしても言いたいことがある」三浦九段が初めて語った騒動の内幕』公開
2月7日 復帰戦を前に、三浦九段が将棋会館で記者会見
(※)三浦弘行九段の復帰会見(書き起こし)
(報)三浦九段は「私がシロだという判定も出たが、その報道を見ていない人もいる。世間一般の方にも冤罪だったと知ってもらいたい」と話した。「もうこういうことはごめん。(疑われることのないよう)対局前、職員にボディーチェックをしてもらうなどして欲しい」と要望した(朝日新聞デジタル)。

2月7日と8日 棋士2人が相次いで規約違反(休憩中の外出)
2月13日   連盟ホームページに「規約違反のご報告」掲載
(公)常務会で調査の結果、厳重注意と罰金処分を決定しました。

2月13日 三浦九段の復帰戦(竜王戦1組ランキング戦で羽生三冠と)

2月26日 ある弁護士が「渡辺明竜王を弁護する」と題する文書をウェブページに掲載し、間もなく削除

2月27日 臨時総会。理事5人の解任議案を個々に採決し、うち3人の解任を可決
      連盟ホームページに「日本将棋連盟理事解任のお知らせ」掲載
(他)田丸昇九段のブログ記事
   「青野九段、中川八段、片上六段らの3人の理事が解任された2月27日の臨時総会」

3月6日  連盟ホームページに「役員補充について」掲載
3月17日 連盟ホームページに「東和男常務理事が専務理事へ」掲載

3月30日 連盟が対局規定委員会を設置
      連盟ホームページに「対局規定委員会設置のお知らせ」掲載

4月1日 第2期電王戦第1局。PONANZA○―●佐藤天彦名人叡王)

4月3日 名人戦で金属探知機を使用することと電子機器を預かることを発表
     連盟ホームページに「第75期名人戦における電子機器の取り扱いについて」掲載

4月10~11日 理事選の立候補受付。定数7(関東5、関西2)に10人(関東7、関西3)が立候補
(他)田丸昇九段のブログ記事
   「田丸が三浦九段と半年ぶりに再会。将棋連盟の理事選挙での立候補者たちの公約」

4月27日 連盟の理事予備選挙。次期の会長・専務理事・常務理事となる7人が内定

5月3~5日 第27回世界コンピュータ将棋選手権。優勝elmo、準優勝Ponanza Chainer、3位「技巧」
5月7日  「技巧2」v2.0.0公開(前年度版に対して約8割の勝率)
5月8日  「技巧2」v2.0.1公開
5月15日 「技巧2」v2.0.2公開(2017年7月12日現在の最新版)

5月20日 第2期電王戦第2局。佐藤天彦名人(叡王)●―○PONANZA

5月23日 三浦九段と連盟の和解が成立
5月24日 三浦九段と佐藤会長が記者会見
      連盟ホームページに「三浦弘行九段と日本将棋連盟の間で和解成立のご報告」掲載
(※)連盟と三浦九段の和解会見(書き起こし)
(※)和解の合意内容は以下のとおり。
・第三者調査委員会作成の調査報告書における、「三浦九段が不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」旨、及び「日本将棋連盟による本件対応は許容される範囲内の措置であり、やむを得ないものと評価されるべきである」旨の結果について、これを受け入れることを相互に確認する。
・日本将棋連盟は、三浦九段に対し不利益を生じさせたとの第三者調査委員会の提言を真摯に受け入れ、三浦九段に謝罪した上、慰謝料(金額は非公表)を支払う。
・本合意の成立をもって円満解決とし、本件に関して相手方の名誉・信用を棄損、あるいは平穏なる生活を害し、あるいは業務の遂行に支障を来たすような言動を相互にしないものとする。
・三浦九段は今後本件に関して民事・刑事を問わず何らの請求をしないことを約束する。
(確認事項)
・平成28年10月11日に実施された常務会での三浦九段に対する事情聴取の場で三浦九段が「しばらく棋戦に休場したい」旨の申し出をし、同月15日から始まる竜王戦七番勝負に出場しなかったことについて、日本将棋連盟による強要はなかったという事実を相互に確認する。
・聴取の際、実際には日本将棋連盟から「竜王戦が開催されなくなった」という趣旨の説明がされたという客観的事実はなかったこと、にもかかわらず三浦九段の記者会見で上記発言をしたのは、聴取の際、「このままでは問題である」という趣旨の話題が出ており、三浦九段がこの話題を「竜王戦が不開催」と認識したためであったことを確認する。

(み)和解会見での三浦九段の発言は「この問題が長引いて、せっかく将棋界が盛り上がっているところに水を差すような形になってしまってはいけない」。

5月29日 総会で役員改選。続いて理事会で会長・専務理事・常務理事を互選
      連盟ホームページに「日本将棋連盟新役員のお知らせ」掲載
(※)総会後の記者会見(書き起こし)
(他)田丸昇九段のブログ記事
   「5月29日の日本将棋連盟の通常総会で報告された三浦九段の冤罪問題の後始末」

7月3日 『将棋世界2017年8月号』発売。「三浦弘行九段と日本将棋連盟が和解」掲載

三浦九段が「休場を申し出た」経緯

 10月11日の聴き取りの場で三浦九段が「休場を申し出た」とされる経緯については、和解の前、三浦九段と連盟(旧常務会理事)の間で主張が食い違っていましたが、現在までに出ている情報を整理すると、次の表のようになります。このうち三浦九段側の当初の主張は12月27日の三浦九段記者会見での横張弁護士の説明によるもの、また青野専務理事、中川常務理事、島常務理事の発言は12月27日の連盟記者会見でのもの(出典は朝日新聞デジタル2016/12/28)です。

調査報告書やり取りの中で、三浦九段は、このような状態では将棋を指すことはできないとして、しばらく休場をしたい旨を申し出た。
聴き取り後の確認の録音片上常務理事が三浦九段の意向の確認として「当面は休場扱いにしてもらって、その間に徹底的に調べて欲しい」と述べたのに対し、三浦九段は「はい」と述べ、さらに片上常務理事が「今の状態だったら、ちょっと将棋はさせないのでということで」と述べた。
第三者委員会但木委員長10月11日に三浦氏が出ていろんな問題が論議され、その中には例えば7月26日の夕食後の30分の離席についての質問が出されていて、それについて的確な答えができないというような状態もある。そういうもののいろいろな影響も考えざるを得ないが、いろんなその場の経緯の中で彼のほうから「こういう状態では出場できない」という申し出があったということで、そう単純に彼が申し出ましたというふうにも…、つまり、そういう経緯の中で彼は「こういう状態の中では出場できない」ということを自ら申し出た。こういう認定をしている。
三浦九段側の当初の主張職員から電話を取り次いだ将棋連盟理事が、みなさんが話している会議室に戻ってきて「今回の竜王戦七番勝負が開催されないことになりました」と会議室にいた者たちに報告しました。その上で将棋連盟理事は「竜王戦が開催されなくなった。それを承知してくれるか」と三浦棋士と渡辺竜王おのおのに尋ねました。三浦棋士としましては「主催者側の判断で竜王戦が開催されなくなった以上、もう仕方がない」として、これを受け入れざるを得ませんでした。
青野専務理事一致率とか色々言われている中で、本人が「そこまで疑われているのであれば将棋は指せない」ということで「休場」という言葉を使った。であれば「休場届を出してくれ」ということであって、連盟の側から「休場届を出してくれ」と言ったことは、間違いなくありません。
中川常務理事島理事が電話で席を外したときに、三浦九段の口から「こういう状態では竜王戦は指せない。事態が収束してから集中して指したい」と。休場については三浦九段から複数回発言があり、それに伴って休場届の提出を求めたというのが事実です。
島常務理事10日の「黒」の空気があり、11日も…その時に自分が完全中立だったかというと、そうではなかったと言わざるを得ない。そういうことで三浦さんが結果的にそういう気持ちになってしまった。休場届を強要したという事実は、まったくない。
和解確認事項平成28年10月11日に実施された常務会での三浦九段に対する事情聴取の場で三浦九段が「しばらく棋戦に休場したい」旨の申し出をし、同月15日から始まる竜王戦七番勝負に出場しなかったことについて、日本将棋連盟による強要はなかったという事実を相互に確認する。
聴取の際、実際には日本将棋連盟から「竜王戦が開催されなくなった」という趣旨の説明がされたという客観的事実はなかったこと、にもかかわらず三浦九段の記者会見で上記発言をしたのは、聴取の際、「このままでは問題である」という趣旨の話題が出ており、三浦九段がこの話題を「竜王戦が不開催」と認識したためであったことを確認する。

 これらの情報を整合させると、①聴き取りで「クロ」と決め付ける雰囲気で三浦九段が一方的に追及されている途中、②島常務理事が電話で席を外した前後に三浦九段から「そこまで疑われているのであれば将棋は指せない」「こういう状態では竜王戦は指せない」といった類の発言が出て、③島常務理事が電話から戻ってきて「このままでは問題」という類の話になり、④それを「竜王戦が開催されない」という意味に取った三浦九段が仕方なく休場を受け入れた―という経緯になります。

 聴き取りの後で三浦九段が内容を確認するために行った録音によると、三浦九段が聴き取りの中で示した意向は「今の状態では将棋は指せないので、当面は休場扱いにしてもらって、その間に徹底的に調べて欲しい」というものですが、経緯は別にして、三浦九段の口から「指せない」「休場」という言葉が出たには違いないので、和解の最終段階で三浦九段側が折れて、上の表にあるような確認事項になったのでしょう。

 ただし、私は何度も繰り返し書いてきましたが、三浦九段の気持ちは「徹底的に調べてもらって、その後に竜王戦を指したい」であって、「疑念を持たれているから竜王戦を辞退する」などとは言っていません。
 考えてもみてください。聴き取りは竜王戦開幕の4日前です。普通、タイトル戦の対局者は周囲から過剰なほどに気を遣われるものです。それがこんな仕打ちを受けたら、誰だって「こんな精神状態でタイトル戦が指せるか! パソコンもスマホも全部調べろ! それで潔白を証明してから竜王戦を指す」と言いたくなるでしょう。

 実際に聴き取りの場でどういうやりとりがあったのかは、録音でも出てこない限り分かりません。三浦九段と連盟が和解を終えた今、もう新しい情報が出てくることもなく、この問題がこれ以上に深く掘り返されることもないでしょう。しかし、上に書いたようなことで、私の中ではこの問題はすでにかなり前に決着済みです。

 ついでなので、新聞テレビの当初(10月12~13日)の伝え方を見ておきましょう。いずれも10月12日夜の島常務理事の説明を受けて書かれた記事で、似通ってはいますが、3つのパターンに分かれています。

朝日新聞「疑念を持たれたままでは対局できない。休場したい」と話したという。
日本経済新聞疑念を持たれたままでは対局できないとして、全公式戦をいったん休場する意向を示したという。
共同通信「疑念を持たれたまま、対局はできない」と休場を申し出た。
読売新聞「疑念を持たれたままでは対局ができない」と三浦九段が竜王戦への出場辞退、休場の意向を示した。
NHK「疑念を持たれた状況では対局できない」として、竜王戦に出場しないことを申し出たということです。
毎日新聞これではとても(将棋を)指せないので休場する」と申し出たという。
東京新聞「疑念を持たれたままでは竜王戦で対局できる状態ではない」「休場したい」という趣旨の発言があった。
スポーツ報知疑いを掛けられたままでは平常心で対局に臨むことは難しいとし、休場の申し出があったという。

 朝日新聞、日本経済新聞、共同通信は「疑念を持たれたままでは対局できない。休場したい」です。ちょっと事務的な書き方ですが、コンパクトなので、以後、この表現が広く一般に多く使われてきました。
 読売新聞とNHKは、その後に「竜王戦を辞退した」という趣旨の文言を付けています。これは三浦九段の意向とは違いますが、連盟側の説明を真に受けて、竜王戦に焦点を当てて書いた結果、こうなったのでしょう。

 それに対し、毎日新聞、東京新聞、スポーツ報知の3紙は書き方が違います。三浦九段の気持ちのほうに焦点を当て、「こんな精神状態でタイトル戦が指せるか!」というニュアンスを感じさせる表現になっています。特にスポーツ報知の表現は最も明確です。「疑念を持たれたままでは対局できない」とはどういう意味なのかが重要で、後の3紙のほうが三浦九段の気持ちに近いものを伝えていることは言うまでもありません。

残されている疑問点

(1)三浦九段への疑い・告発は正当なものだったのか

 7月26日の久保戦において「三浦九段が夕食休憩後の自分の手番で31分間も離席した」というのが事件の発端ですが、これが久保九段の勘違いだったことはもう十分に知られていると思います。この時、三浦九段の消費時間43分のうち、実際に離席したのは3回で合計約14分。つまり三浦九段は対局室から何度か出たり入ったりしていたはずで、久保九段がそれを31分の継続した離席と勘違いしたということは、その間、久保九段のほうがずっと離席して、三浦九段を探して将棋会館の中をうろうろ歩き回っていたということでしょう。
 対局に集中しないでそんなことをしていれば負けて当然ですが、それはともかく、久保九段はこの時、なぜそこまで三浦九段を疑っていたのでしょうか。

 もっと不可解なのは渡辺竜王です。渡辺竜王は10月3日の対局中は「ソフト指しをされたという印象は持たなかった」のに、翌日以降、観戦記者や千田五段から話を聞き、自身でも「技巧」を用いて三浦九段の過去の棋譜を検証した結果、「疑いが確信に近づいた」とされています。面と向かって対局していた時の感触より、後で他人から聞いた話や一致率を信じるというのは、どういうことでしょうか。

 久保九段と渡辺竜王は、対局中の感触は違いましたが、ともに対局後に一致率などの話を聞いたり自分で調べたりして疑いを深めたという流れは同じです。周囲からどういう話を聞き、どういう検証を行い、何を根拠にして「疑いが確信に近づいた」のでしょうか。今後の告発ルールのあり方を考えるためにも、この部分はきちんと検証してほしいと思います。

(2)渡辺竜王はいつ、どういう形で、週刊文春に記事が掲載されることを知ったのか

 久保九段も渡辺竜王も、もしかしたら対局の前から三浦九段を疑っていて、対局中の三浦九段の離席が気になったのではないかという感じを受けます。渡辺竜王については、9月中旬に常務会に対して竜王戦七番勝負で金属探知機を導入することを求めたとみられるので、その時点ですでに三浦九段を疑っていたと思います。

 渡辺竜王は同じ9月中下旬に『別冊宝島・将棋「名勝負」伝説』の特集「将棋と人工知能」のインタビュー取材を受けています。インタビューを行ったのは他でもない、すぐ後に『週刊文春10月27日号』(10月20日発売)に『将棋「スマホ不正」全真相(渡辺竜王独占告白)』の記事を書く中村徹週刊文春記者です。
 このインタビューで渡辺竜王は「将棋に解があるとすると、我々の対局をソフトを使って解析すれば『答え』が分かっちゃう訳です。『この局面からなら、こう指せば勝ち』とか」、「ただ、中盤のポイントとなる局面の『解』をソフトに示してもらったとしても、そこから自分が指し継いで勝ち切れるかは別の話なんです。将棋の中盤以降って、石ころや落とし穴がゴロゴロある。そこを実戦で自分が果たして正しく指せるかどうか」と話しています。渡辺竜王の「ソフト観」とともに「ソフト指し観」がうかがえると思います。

 このインタビューの最後に渡辺竜王は三浦九段との竜王戦について聞かれ、過去の対戦成績で圧倒していることを踏まえて「まあ“平和に行ければ”こっちが勝つ訳です」と答えています。この時点では当然、三浦九段の挑戦を受ける前提で答えています。
 渡辺竜王が告発の意思を固めるのは10月4~7日の間で、同じころ、週刊文春に記事が掲載されるという情報を知ったはずですが、9月から中村記者と何度も接点がある中、いつ、どのような形でその情報を知ったのでしょうか。相手から取材をぶつけられたのか、それとも情報交換しているうちに相手が記事にすると言い出したのか―これは処分の妥当性にも関わるポイントであり、明らかにしてほしいと思います。

(3)常務会がもっと適切な対応をできた可能性はなかったのか

 不正の証拠もないのに、なぜ拙速な出場停止処分を行ったのでしょうか。三浦九段を監視までして何も問題がなかったのに、なぜ疑いを打ち消さなかったのでしょうか。なぜ「黒にしては軽過ぎる、白にしては重過ぎる」不可解な処分を行ったのでしょうか。
 第三者調査委員会から「非常事態における措置として、当時の判断としてはやむを得なかった」という報告が出たとはいえ、本当に他に方法がなかったのでしょうか。

 10月10~12日の状況として、▽10日の極秘会合から三浦九段は「クロ」だろうという思い込みが生じた、▽聴き取りの中で「31分間の離席」が重みを持ってしまい、三浦九段がうまく説明できなかったこともあり(31分間の離席は実際にはなかったのだから当たり前ですが)、理事たちが疑念を深めてしまった、▽大半の理事にソフトや一致率に関する正しい認識がなかった(無知もしくは認識不足だった)、▽週刊文春に記事が出るという話があった、▽3日後に開幕する竜王戦七番勝負を「無事に」行いたかった―といった事情があることは分かっていますが、これらから、ただちに処分が「やむを得なかった」とは言えません。

 そもそも10月11日の常務会の聴き取りは、9人で三浦九段1人を囲み、しかも理事でなく告発者の渡辺竜王と千田五段が三浦九段の前に座って追及するという非常識なやり方で行われたものです。加えて、この聴き取りは、前夜の棋士7人の「極秘会合」から続いて、三浦九段を「クロ」と決め付ける雰囲気が支配的な中で行われました。そんな「事情聴取」で得られた「供述」に正当な証拠能力はありません。

 そのような問題のある聴き取りの翌日、常務会は、連盟の顧問弁護士にも相談せずに、理由も満足に説明できない処分を行うという非常識な対応を重ねました。
 常務会はその後、仕方がないので、一般向けに「離席が悪い」というキャンペーンを繰り広げました。棋士向けの説明会では一致率について説明しましたが、報道・一般向けにはそういう説明はしませんでした。
 例えば、竜王戦挑戦者決定三番勝負を理事が見張っていた一件、三浦九段に不審な行動はなく、常識的に考えれば三浦九段の「シロ」の材料のはずですが、谷川会長は10月21日の記者会見で「三浦九段が頻繁に離席する状況を理事らが確認していた」と、ことさら離席の話だけを取り出して説明しています。

 さらに、連盟ホームページなどを通じての公式発表を何もしない一方で、週刊文春に協力して自分たちに都合の良い記事を書かせ、完全に三浦九段を「クロ」扱いするなど、言語道断です。
 こうした常務会や一部理事の非常識な対応について、すべてきっちり検証すべきだと思います。

 また、より大局的に事件を振り返るなら―確かに竜王戦七番勝負は行われました。しかし、その七番勝負は決して「無事に」行われたものではなく正当性に疑問符がつき、A級順位戦も王位戦も朝日杯将棋オープン戦も傷物になり、そして連盟の信頼と権威は大きく傷つきました。
 そういう観点から常務会の一連の対応について検証し、総括すべきではないでしょうか。

(4)観戦記者たちは事件にどう関わったのか

 ここで言う観戦記者には2通りあります。1つは、三浦九段への疑いを渡辺竜王に吹き込んだ観戦記者です。第三者調査委員会の調査報告書(概要版)には「渡辺竜王は4日以降、観戦記者との意見交換(略)等により」と書かれています。この観戦記者は何を疑いの根拠として、渡辺竜王とどういう意見交換をしたのでしょうか。観戦記者を仕事にしているなら、ご自身で明らかにする責任があると思います。

 もう1つは、それ以外の記者たちです。10月12日に三浦九段への出場停止処分が発表された直後は、記者たちも何が起きたかよく分からないまま、手探りで記事を書いている印象を受けました。問題はその後です。連盟からは情報らしい情報がまったく出されず、将棋ファンは多くの疑問を抱き、とにかくまずは情報を求めました。しかし、そうした将棋ファンの期待に応えてくれた記者や報道機関は皆無でした。
 連盟が棋士に「緘口令」を敷き、思うように情報が得られないという事情はあったと思います。しかし、そこを突破するのが記者の仕事です。奇しくも将棋史に残るこの大事件に遭遇して、個々の記者が何を考え、どういう仕事をしたのか。1人でも多くの記者に書き残していただければと思います。

(5)その他、さまざまな疑問点

・常務会に対応を求めていた「5人前後の棋士」というのは誰で、何を根拠に疑っていたのか。
・ウワサは棋士や観戦記者などの間にいつごろ、どういう形で広がったのか。
・常務会が最初からスマホ単体の使用でなく遠隔操作を疑ったのはなぜか。
・渡辺竜王の対局拒否発言の本当の事実関係。
・三浦九段はなぜ「守衛室で休んだ」と説明したのか。
・読売新聞社は処分の決定に何も関わっていないのか。
・竜王戦の開催延期を検討する余地は本当になかったのか。
 …など、まだまだあると思います。

 連盟がもう何もしないと言うなら、ジャーナリストの出番です。
 日本にジャーナリストがいればの話ですが…

最後に

 最後に、いま私が感じている3つのことを書いて、一連の記事の締めくくりとします。

 1つ目は、三浦九段の名誉回復の難しさです。
 今回、改めて12月27日の三浦九段の記者会見の書き起こしを作成した際、横張弁護士の「将棋ファンではなくて一般の将棋にあまり詳しくない人に話を聞くと、みんなクロだと思っている。第三者委員会の発表があっても、完全にはソフトで指した棋士だという認識は世間から消すことは難しい事案だと認識している」という発言が目にとまりました。2月7日の三浦九段の復帰会見でも、三浦九段が最も強調したのは「世間一般の方にも冤罪だったと知ってもらいたい」ということでした。

 実際、第三者調査委員会の調査報告書が出てから半年余が経った現在も、三浦九段の名誉回復はまだまだ進んでいないと感じます。三浦九段に向けられた疑いの根拠はすべて否定され、三浦九段は他の棋士たちと何も変わらない(むしろ、いろいろ調べられた三浦九段のほうが透明度が高い)のですが、一度疑われ、大々的に報道されると、なかなか理解されません。加えて、あえて疑わしいとか「クロ」とか言いたがる中二病的な勘違い人間も、世間には常にある程度の割合はいますから。

 この半年、連盟はことあるごとに三浦九段の名誉回復に尽力すると言ってきましたが、具体的な取り組みは何もしていません。私はやはり、今さらではあっても、三浦九段への出場停止処分を取り消して連盟の間違いを認めることが最良の名誉回復策だと思います。「当時の判断としてはやむを得なかった」というのは、今から見れば間違っているということですから。

 2つ目は、スポンサーからの契約金に頼り切った現在の連盟と棋士の体質です。
 竜王戦七番勝負を何とか中止せずに行いたいというのが、常務会が処分を行った際の大きな判断要素の1つでした。この理由の前には、棋士の対局機会を奪っていいのかという問題はほとんどかえりみられませんでした。
 処分の後も、理事の発言など至るところで、連盟や棋士の思考が「スポンサー(契約金)ファースト」になっていることを感じました。現在もそうです。一般の営利企業ならそれでいいでしょう。しかし日本将棋連盟は公益社団法人で、営利企業ではなく、また単なる棋士の利益配分組織・互助組織であっても困ります。

 戦後間もなく順位戦の制度がスタートした時、その収入で生活が成り立つ棋士などいませんでした。その後、棋戦・タイトル戦が増え、(あえて書きますが)なんだかんだ言っても今の棋士は楽に生活できるようになりました。生活もできないようでは新人も入ってこなくなって困るし、トップ棋士はもっと恵まれてもいいと思いますが、しかし今は、組織にぶら下がっているだけの棋士が多過ぎるのではないでしょうか。
 新聞業界の経営が厳しくなってきた一方で、ネット事業者のドワンゴやAbemaTVが参入し、そういった面では今は過渡期にあります。しかし、スポンサーの業種や顔ぶれが変わったところで、連盟や棋士がスポンサーの契約金に頼り切っている構造は何ら変わりません。

 今回の事件を通じ、連盟がスポンサーのほうばかり向いて将棋ファンをないがしろにする現実を目の当たりにした時、どうしても現在の連盟には構造的な問題があるのではないかと考えてしまいます。

 3つ目は、今回の事件を通じて垣間見えた一部の棋士の愚かさです。
 プロなら普通に読めて当たり前の指し手なのに、それをソフトに教わらなければ指せない手だなどと言い出すのは、プロの能力の自己否定に他なりません。今回の事件から見えるのは、渡辺竜王を筆頭に、ソフトの幻影に怯えてプロの誇りを失った一部の棋士たちのあわれな姿です。こんな者たちは、これからの新しい世代の棋士たちによって、さっさと乗り越えられなければなりません。

 こういう愚かさを乗り越え、ソフトの力は過不足なく適正に認めた上で、それでもなお人間の持っている力を示し、自らの存在意義を示していくのでなければ、プロ棋士に未来はありません
 目次に戻る