竜王戦挑戦者差し替え事件その後7

―三浦九段復帰戦とマスコミ各社の報道の変化

 【2017年2月23日】

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 昨年10月にこの事件が発生した当初から、私はマスコミ各社の事件の伝え方にも興味を持って経過を追ってきました。今回の記事は、第三者調査委員会の報告(12月26日)から三浦九段復帰戦・復帰第2戦の後(2月21日)までの間について、ひとまず結果をまとめたものです。

三浦九段の復帰戦

 先に復帰戦のことに触れておきます。
 2月13日に三浦九段の復帰戦(対羽生三冠)、20日に復帰第2戦(対先崎九段)が行われましたが、三浦九段はともに黒星でした。両局とも難しい終盤になったようですが、三浦九段自身が2月7日の復帰会見で話していたように、4か月間近くまったく将棋の駒にも触れないブランクがあっただけに、本来の調子を取り戻すには時間がかかるようです。
 ネット上ではまた三浦九段を攻撃するような書き込みが増えたそうで、困ったものです。勝っても負けても別に普通のこと。まだしばらく注目される対局が続きますが、平常に戻るまで見守っていきたいと思います。

 20日の先崎九段戦はまだ棋譜を見ていないので内容が分からないのですが、先崎九段の感想を聞きたいので、どこかに何か書いていただけることを期待します。

 13日の羽生三冠戦はニコニコ生放送の中継で見ました。来場数37万人台(竜王戦七番勝負の3~4倍)という、すごいことになっていました。コメントはうっとうしいので消しっぱなしですが、聞いた話だと、三浦九段への温かい応援が多かったようで良かったです。まだ公開されていて視聴できます。

 ニコニコ生放送【三浦九段復帰戦】羽生善治三冠 vs 三浦弘行九段

 羽生三冠の先手で矢倉模様の出だしから、後手の三浦九段がPonanza流の左美濃急戦を選んで「おー!」。プロ間でもかなり指されているそうですが、三浦九段がどこまで研究していたか気になります。羽生三冠は角で3筋、2筋の歩を交換し、その角を2六に据えて後手の右銀の動きを牽制、そこから6七金左と形にこだわらない名人の一手を見せて再び「おー!」。後手の5筋からの攻めを正面から受け、3筋周辺にアヤをつけて反撃を狙う展開になりました。夕休過ぎでは7八の「と金」が大きく後手が良さそうに見えましたが、後手の玉頭付近も薄く、実際は難しい局面だと思います。そこからが勝敗を左右する勝負所ですが、やはり三浦九段はまだ勘が戻っていない感じだったのではないでしょうか。

 ニコニコ生放送は解説が中村九段、聞き手が安食女流初段。ふんにゃりとした組み合わせで、これで正解だった感じです。画面が対局場からスタジオに切り替わった冒頭、中村九段が今回の事件について話し、三浦九段と家族・関係者に謝罪しました。中村九段は、自身も対局中に棋書を見てしまおうかと思った経験があると明かし、今回の話に「棋士の誰もが違和感を感じたと思う」ものの、「ひょっとしたら魔が差してしまったんじゃないかと思ってしまった」といい、「三浦さんを信用できなかったのは本当に悔やんでいる」と述べました。また将棋ファンへのお詫びを述べました。率直で真摯な語り口で、多くの視聴者が好感を持ったと思います。
 中村九段は解説の途中に三浦九段クイズをはさんだり、「ここだけの話」を連発したり、サービス満点。研究会の代わりにコンピューターを使うようになったといった興味深い話も出てきました。
 冒頭の話は「将棋ワンストップ」の管理人さんが当日すぐに書き起こしを掲載してくださいました。

 将棋ワンストップ 三浦弘行九段の復帰戦。中村修九段から将棋ファンや指導者の方へコメント

 この復帰戦では、対局前に両対局者がボディーチェックを受けました。これは三浦九段が2月7日の復帰会見の中で、変な疑いを気にしなくても済むように自分だけやってほしいと希望したもので、連盟は当面、三浦九段に対してだけ行うと決めたようですが(スポニチ2/11)、羽生三冠はそれはおかしいと自ら申し出てチェックを受けたそうです。
 前から書いていますが、持ち物検査・金属探知機の使用は個々の棋士の事情によって左右されるべき事柄ではなく、対局者の意向によってやったりやらなかったりするのは本来おかしいし、対局者によって扱いが違うのはもっとおかしな話です。今回は三浦九段の希望に沿った特別な対応で、また対局ルールに関しては整備途中のため仕方ない面もありますが、統一的なルールを早く明確にすべきです。

 羽生三冠の対応はさすがです。でもこれ、多くのファンが羽生三冠ならきっとこうすると予想していました。この対局をめぐっては前日からおかしな報道(後述)もあって不愉快な気分だったのですが、すっかり気分が晴れました。
 すばらしい熱戦を見せてくれた三浦九段、羽生三冠と、温かく見守ったファンに拍手、拍手(思わず原田泰夫)。

マスコミ各社の報道の変化

 昨年12月26日に第三者調査委員会が報告の概要を発表した後、新聞・テレビの伝え方はほとんどが「不正の証拠はなかった」という表現で、このため、報告の内容を詳しく知らない人の間では「疑わしいが、証拠がないから『無罪』になっただけではないか」という誤解が生じてきました。この点は三浦九段も気にしていて、2月7日の復帰会見でも強いこだわりを見せていました。
 この会見を境に、7日の夕方から「疑惑が晴れた」という表現に変える新聞が出てきて、現在はこの表現が多くなりつつあります。しかし、まだ「証拠はなかった」という表現を続けている新聞・テレビもあります。
 2016年12月26日~2017年2月21日の新聞・テレビ各社の表現の変化について、一覧表にまとめました。興味のある方はご覧ください。以下の記事も含め、私の見落としの可能性もあるので、お気付きの点はご指摘いただければ幸いです。

 おもな新聞・テレビの記事で使われた表現の変化(2016/12/26~2017/2/21)

 第三者調査委員会の報告を伝える記事で「実質的な『無罪判決』と言える」と書き、三浦九段は「真っ白」という印象をストレートに伝えたのは東京新聞12/27。これは第三者調査委員会の調査報告書の概要第三者調査委員会の記者会見の質疑応答で記者が受けた印象をそのまま記事にしたものとみられ、ニコニコ生放送の中継を見た人ならみな同じ印象を持ったと思います。東京新聞の樋口薫記者は、この会見や2月6日の佐藤会長の就任会見でも、核心を突いたいい質問をしていました。
 東京新聞は事件の呼び方についても「三浦弘行九段が対局中に将棋ソフトを不正使用した疑いをかけられた問題」という独自の表現を使ってきました。ただ、共同通信の配信記事を使った際には「証拠はなかった」になってしまいましたが。

 スポニチと日刊スポーツの2紙は、比較的早い段階から「疑惑が晴れた」「不正はなかった」「潔白」などさまざまな表現を使っていました。これは記者が三浦九段は「真っ白」という印象を持っていて、それをその時々でさまざまな言葉を使って表現したと思われます。
 この2紙は、共同通信の配信記事をそのまま使うケースも多いですが、独自に書いた記事もあり、将棋記事は割としっかりしています。特にスポニチはスポーツ紙では唯一の棋戦主催社でもあり、興味本位の曲がった記事づくりを一切せず本筋の記事を書いています。

 上記のとおり2月7日の三浦九段の会見を境に「疑惑が晴れた」という表現が広がりましたが、私が知る限り、7日夕方からこの表現を使い始めたのは朝日新聞、スポーツ報知、時事通信の3社です。毎日新聞は三浦九段復帰戦が終わった2月13日深夜から。続いて日本テレビ、フジテレビがこの表現を使いました(フジテレビの迷走については後述)。
 この「疑惑が晴れた」という表現、上記のスポーツ紙2紙が早くから使っていたケースを除き、出所はどこかというと、2月6日の佐藤会長の就任あいさつだと思います。

 朝日新聞は昨年10月12日、三浦九段への出場停止処分の背景にソフト不正疑惑があることを最初に報じました。それ以前、9月27日の時点で「対局中、相手が頻繁に席を外すと疑念がわく」という棋士の発言を記事にし(朝日新聞2016/9/27)、離席と不正疑惑の結びつきを早くから示唆していました。棋士たちへの直接取材によるものと思われますが、その後はこれといって目を引く記事はありませんでした。村瀬信也記者はツイッターで日々こと細かく情報を伝えてくれるのがありがたく、記事も早い方ですが、記事の内容や会見での質問は可もなく不可もなしという感じです。
 スポーツ報知には北野新太記者がいて、「いささか私的すぎる取材後記」(前身は「実録!ブンヤ日誌」というブログにすぐれた文章を多く書いており、私もファンです。1月18日に谷川会長の辞任をいち早く伝えました(スポーツ報知1/18)。しかし肝心の処分問題の方では仕事らしい仕事が見られませんでした。これからどんなことを書くか、楽しみに待っています。
 毎日新聞は三浦九段の反論文書(1回目と2回目)の全文を公開したのが目を引きましたが、記事の方は並み。山村英樹記者はしばしば軽率な記事が目に付きます。1月7日、王将戦で金属探知機の使用が見送られたことについて「対局者の意向もあって」と書いていましたが、前々回の「竜王戦挑戦者差し替え事件その後5―連盟常務会まったく反省の色なし」の記事で書いたとおり、「将棋世界」3月号に出てくる話とは食い違っています(まだ説明がありません)。2月初めに谷川会長が入院した時も「新会長を決める6日の臨時棋士総会や理事会も欠席する見通し」と書いていましたが、谷川会長は理事を辞任するのだから、新会長を互選する理事会に出席するわけがありません。校正や整理が気づきそうなものですが。

 時事通信は今回の表現の変更こそ共同通信に先んじましたが、普段の将棋記事はまったく駄目で、今回の事件でもずっと「対局中の不自然な離席を理由とした出場停止処分」という珍妙な記事を繰り返し流していました。配信先の新聞社などから苦情が出なかったのでしょうか。

 以上のように「疑惑が晴れた」という表現を使う新聞・テレビが増えてきた一方で、相変わらず「証拠はなかった」という伝え方を続けている新聞・テレビも少なくありません。共同通信、産経新聞、日本経済新聞、SANSPO、デイリースポーツ、NHK、TBS、テレビ朝日、テレビ東京です。だいたいは共同通信の配信記事をそのまま使ったり下敷きにしているケースで、共同通信が表現を変えてくれれば、多くの新聞・テレビの伝え方が一気に変わるのですが。
 なおSANSPOは2月20日、共同通信の「不正の証拠はない」の配信記事に対し、初めて「不正疑惑晴れた三浦九段」というタイトルを付けました。

 竜王戦を主催している読売新聞は、1紙だけかなり変わった報道を続けています。基本的には第三者調査委員会の報告に従って「証拠はなかった」という表現ですが、「処分はやむを得なかった」の方を強調したり、「自ら意思表示した休場届を提出しなかったことなどから処分を受けた」と三浦九段に落ち度があったかのような書き方をしたり。
 読売新聞の報道は非常に特殊ですが、連盟の常務会メンバーの発言と共通している点が興味深いところです。棋士たちは月例報告会や総会の場で、こういう説明ばかり聞かされているのではないでしょうか。
 昨年10~12月の竜王戦七番勝負の正当性にかかわる問題なので、読売新聞と連盟が自分たちの間違いを認めたくないのは分からないでもないですが、間違いは早く直した方がいいのではないでしょうか。時間がたつほど傷が深くなります(もう手遅れかも知れませんが)。

 ここまで新聞・テレビについて見てきましたが、それ以外では、東洋経済ONLINEの1月4日の記事が「第三者委員会が出した結論は『完全なシロ』」とはっきり書いたのが目を引きました。こういう記事がもっと多く出れば良かったのですが。

 一般的に言って将棋記者がいる新聞に比べると専門記者のいない新聞やテレビは理解が浅く、間違った情報を伝えてしまうケースもありました。例えば、2月13日の三浦九段の復帰戦を伝えた際、12月26日の第三者調査委員会の報告によって処分が解除されたとか復帰が決まったと伝えたところがいくつかありますが、これは間違いです。もともと出場停止処分の期間は12月31日までで、報告を受けて処分が解除されたり復帰が決まったわけではありません(連盟は何もしていません)。

 もう1つ全体を通じて気づいたのは、「証拠はなかった」という伝え方をしている場合でも、その後に「連盟が謝罪した」とか「谷川会長が引責辞任した」と付け加えた場合は、三浦九段は悪くないという印象が格段に強くなるということです。これは明らかに三浦九段の名誉回復にプラスになっています。
 ただ、本当に「連盟が謝罪した」と言えるかどうかには疑問が残ります。確かに12月27日の連盟の会見や1月18日の谷川会長の辞任会見では「三浦九段につらい思いをさせてしまい、申し訳なく思う」という言葉がありましたが、常務会は三浦九段に対して直接の謝罪を一度も行いませんでした。
 また2月7日に三浦九段が将棋会館で記者会見を行う前、理事室で佐藤会長や青野専務理事から謝罪の言葉を受けたということですが、これは三浦九段の方からあいさつに立ち寄ったという程度の話で、連盟側がこれをもって「正式に謝罪した」と言うのはいかがなものかと思います。
 連盟の謝罪が三浦九段の名誉回復にとって大きな一歩になることは間違いないのだから、早くきちんと謝罪すべきです。また、前から書いていますが、三浦九段の名誉回復に最も効果があるのは、連盟が間違いを認めて処分を取り消すことです。なんとかその方向に進んでもらいたいものです。

 さて、ここでフジテレビ(FNN)の迷走について書いておきます。2月13日の三浦九段の復帰戦について、フジテレビは次の4本のニュースを流しました。
日時タイトル
2/13 12:09将棋ソフト不正騒動 三浦弘行九段、羽生善治3冠を相手に復帰戦
2/14 1:20将棋 三浦弘行九段、復帰戦で羽生善治三冠に敗れる
2/14 4:56将棋ソフト疑惑の棋士が復帰戦 勝敗は?
2/14 20:14三浦弘行九段が羽生善治三冠との復帰戦

 問題になったのは3本目の「将棋ソフト疑惑の棋士」というタイトルで、これが「ホウドウキョク」とかいう何だかよく分からないサイトに転載されて多くの人の目に触れたこともあり、大きな批判を招きました(3本目はすでに両サイトから削除されています)。
 3本目のニュースの内容自体は、実は2本目とまったく同じです。ところがタイトルだけが変わってしまい、大問題になったのです。なぜこんなことが起きたのでしょうか。テレビ局の現場はよく知らないので推測になりますが、おそらく3本目のニュースを放送した14日早朝の担当ディレクターか誰か、タイトルを付ける立場の人間が、三浦九段は「疑惑の棋士」だという間違った認識を持ち続けていて、間違ったタイトルを付けてしまったのだと思います(悪意ではなく認識の間違い)。
 ここから分かることは、不正のイメージはあっという間に広がって浸透・定着し後々まで人の心に残るのに対し、それを覆してイメージを修復するのは難しく、現にテレビ局のニュース部門の担当者ですら間違った認識を持ち続けていたということです。三浦九段の名誉回復が進んでおらず、悪くすると間違ったイメージが再生産される場合すらあることを示す実態の一端です。

 ネット上で炎上に発展しかねない大きな批判を浴びたため、フジテレビは14日夕方、修正したニュースを改めて放送しました。それが4本目で、他の新聞などを見て検討したのか、「疑惑が晴れた」という表現を使いました。
 上記のとおり、テレビ局で「証拠はなかった」から「疑惑が晴れた」に表現を変えたのは2社だけですが、フジテレビの場合、その点は評価されず、間違ったタイトルを付けた時の悪いイメージだけが残り、いまだに叩かれ続けています。フジテレビは16日昼の「バイキング」という番組で三浦九段の冤罪を前面に出しましたが、評価の挽回には至っていません。三浦九段が受けている苦しみを、わずかながら自分が味わう破目になったと言えるでしょう(自業自得なので、何も落ち度のない三浦九段と並べるのは不適切ですが)。
 ただ、まともな対応が見られないどこかの公益社団法人と違って、きちんと修正したニュースを放送し、別の番組でのフォローまでしたのだから、あまり批判を続ける必要はないと思います。

 あとテレビ関係では、コメント欄で、2月14日の「ちちんぷいぷい」(関西ローカルの毎日放送)という番組での神吉七段の発言についてもご意見をいただきましたが、この番組は観ていないので論評は控えます。

 最後に、前項の三浦九段復帰戦の記事の末尾で触れた「おかしな報道」について。それは復帰戦前日の2月12日、朝日新聞出版WEBサイト「dot.」に週刊朝日の記事として掲載された「将棋ソフト不正使用騒動の三浦九段 復帰戦の対戦相手は“因縁”の羽生三冠」です。「動画の視聴者は、三浦九段の一挙手一投足に気を配るだろう。離席のたびに注目が集まるのは必至だ」と興味本位で見当違いのことを書いたり、週刊文春の記事に使われた羽生三冠のメールを引き合いに出して「“因縁”の対局」に仕立てたり。羽生三冠の妻の理恵さんの連続ツイートを知らないならまだしも、「理恵さんがツイッターアカウント上で釈明したことで、騒動が広がる結果となった」などと書く始末で、まったく悪質と言うしかありません。
 この記事、末尾に「週刊朝日 2016年2月24日号」という「???」な日付が入っていますが、実際に発売された2月24日号では内容の違う記事になっていました。批判を浴びて差し替えたという見方もあります。

 加えてあきれたのが、復帰戦当日13日の朝に出た産経新聞の記事「注目の因縁の対局 午前10時から 将棋の三浦弘行九段が羽生善治棋聖と復帰戦」です。羽生三冠のメールと理恵さんの連続ツイートを引き合いに出して「因縁の対局」に仕立てるのは前日の週刊朝日の記事と同工異曲で、コピペかと思うほど。産経が朝日の記事を真似て、何がうれしいのでしょうか。この記事はさほど大きな話題にはなりませんでしたが。

 フジテレビにせよ週刊朝日にせよ、ネット世論の力が認識の間違いを改めさせ、記事を修正させたと言えると思います。いまマスコミが興味本位のおかしな記事を流せば、すぐにネット上で将棋ファンの袋叩きにあいます。これが間違った方向に行くと大変なことになりますが、将棋ファンはきちんと物事を見分ける力を持っている方が多いのか、一方的に間違った方向に行く心配はなさそうです。ちょっと面白い現象で、三浦九段の名誉回復を支える力になっていることは間違いありません。

疑った側・処分を行った側の行動の検証を

 連盟の方に目を向けると、前から何度も書いていますが、まずは疑った側・処分を行った側の行動についてきちんと検証することが絶対に必要です。そこを検証しなければ何も始まりません。その動きはまだ見られません。やはり現在の常務会にはやる気がなさそうです。

 2月22日、第2期電王戦の日程などが発表されました。棋士と将棋ソフトが対決する電王戦はこれで打ち切りだそうで、電王戦についてはまた別の記事に書く予定です。
 この発表に続く質疑応答で、記者から今回の事件に関連する質問があり、佐藤会長は「この件については後日、将棋連盟の方でこのような機会を設ける」と答えていました。2月27日の臨時総会の後あたりに記者会見するということでしょうか。

 27日の臨時総会では、三浦九段への処分を行った常務会メンバーのうち辞任せずに残っている専務理事・常務理事5人についての解任議案が採決されるはずです。常務会は竜王戦のスポンサーのお金が何より大事だと考えたのでしょうが、棋士を守らず、棋士や連盟への信頼を損ない、棋戦を傷ものにし、その上に連盟に莫大な金銭的損害を与えたのだから(第三者調査委員会の判断はそこまでの結果を踏まえていません)、その行動が「妥当だった」で済むはずがなく、解任以前に辞任するのが当然だと思います。第三者調査委員会の報告を受けた後の行動を見ても、6月まで残したところで正常化の妨げにしかならないことは明らかなのだから、早く正常化したいなら解任するのが早道です。

 採決の結果がどうなるかは分かりませんが、どちらの結果になっても、問題は検証を実行するかどうかです。しかし、三浦九段の復帰戦が関心を呼んでいる最中に外出事件を起こす棋士が続けて出たりと、一部の棋士の緊張感のなさには本当にあきれ果てました。こんな棋士が多いようだと、連盟に自浄作用を期待するのは無理でしょうね。まともな棋士がどれだけいるのか、まずそれだけでも知りたいところです。

 さらに先を考えると、連盟の運営体制をどうするかという課題もありますが、それ以上に根本的な問題は連盟の収支構造でしょう。スポンサーのお金だけに頼り切って全棋士がぶら下がっているから、スポンサーの方ばかりうかがって、今回のように棋士を犠牲にする事件が起きたり、ファンをかえりみず情報を出さない姿勢が生まれているのだと思います。この問題を何とかしないと、個々には魅力的な棋士がたくさんいるのに連盟はどうしようもないという状況が今後も続いてしまうのではないでしょうか。
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